エッセイ」カテゴリーアーカイブ

さらっと親父

 国民的漫画であります「美味しんぼ」といえば、主人公、山岡士郎とその父、海原雄山の確執が見どころの一つでありますが、お互い親子の縁は切ったと言い張り(山岡氏は「法的にも無関係である」と発言していますが、それは無理なので、勘違いか、敢えてそのような発言をしたものと思われます)、山岡氏は海原氏が父親であることを認めようとしない頑なな態度を取り続けます。海原氏も「あの男は死んでも許さない」と発言していたりするのですが、海原氏側の頑なさは回を追うごとに薄れていきます。薄れていくというか、初期設定をミスったと思った原作者によって無かったことにされ……なんでもありません。
 山岡氏は一貫して海原氏を「あの男」「至高のメニューの担当者」「雄山」としか呼ぶことはなく、海原氏が交通事故に遭い、意識不明に陥った際も、父親とだけは絶対に言えないと悩みに悩み、海原氏の回復を願う周囲からの強い懇願もあった結果、絞り出すように「親父……」と言ったのが精一杯でありました。
 しかし、しかしです。第82巻112ページ第5話「家庭のおやつ自慢大会」の一コマで、「俺の家には親父の弟子たちもいて」とさらっと「親父」と呼んでいて、何度読んでも腰を抜かしそうになるんですね。海原雄山が絡まず、ストーリー進行上、全く重要ではない話の一コマでです。誰も親父発言に反応していないのもあまりに不自然です。最も驚くべきであろう栗田氏も無視をキメこんでいます。そこスルーしちゃダメだろとツッコまずにはいられません。
 これを山岡氏が成長した結果と取るか、設定ミスと取るかは読者の自由ですが、私は明らかにミスだろうとずっとずっと思い続けているわけです。ここまで来てそりゃないぜと。
 オチ? ないよそんなもの。

メゾフォルテ

 “mf”や“mp”を当たり前のように「メゾフォルテ」「メゾピアノ」と教えられてきたので疑問を持たなかったのですが、発音として「メゾ」は違うんじゃなかろうかと、ふと思った。そもそも「メゾフォルテ」は海外で通じるんだろうか。
 “mezzo”なのだから「メッゾ」「メッツォ」と教えた方がいいんじゃないか。
 もっと言えば「“mf”は“mp”より強く“f”より弱い!」じゃなくて、原語の意味からきちんと教えた方がはるかに音楽的理解や考察が深まるのでは。
 “mezzo”は「半分」という意味であって、ではどうして“mf”という記号が作られたのか、杓子定規に“f”の半分で演奏すればいいのか、“mp”は“p”の半分になってしまうんじゃないのか等を考えた方が音楽が楽しくなると思うのです。

コーンも取ってあげられない世の中じゃ

 自分でソフトクリームを作れるお店で、小学校低学年くらいの子が、自分の背では届かない高いところにあるコーンを取れずに困っていたんですね。
 通りがかった時に気づいたので、取れないんだ、取ってあげるよと言ってひょいとコーンを渡したら、首を振っていらないと言うんです。
 取ってしまったコーンを戻すわけにもいかず、いらないんだ、そっかと言いながらコーンを持って席に戻ったんですが、見ていたら、その後お父さんにコーンを取ってもらっていました。
 なるほど、不審者扱いされたわけかと思って、なんともやりきれない気分になったわけです。もう他人同士の親切が通じる時代じゃなくなってしまったんだと。
 なんて思いながら、アイスはいらないのでコーンだけ食べましたけどね。

現金から解放される

 昨年の12月くらいから、可能な限りのキャッシュレス生活を始めています。

 日本人誰しもそうだと思いますが、幼い頃からの刷り込みで、現金信仰のようなものを持っていたのですが、どう考えても現金を持ち歩くのは合理的ではないということに気付きはじめ、環境を整えてみました。

続きを読む

映画「ミスト」

 「後味の悪い映画」の話が出た時に必ず名前が挙がる「ミスト」。どんなもんだろうと思いつつ見ていなかったのですが、ようやく見ました。

 見た人が全員鬱になるという前評判通りすぎて、これはちょっと二度目は見たくないというか、数時間立ち直れなかった。間違っても落ち込んでる時になんて見ちゃダメ。ゼッタイ。

 途中はいいです。パニック映画としてよく出来ています。面白かったです。化け物もおぞましいけど、結局人が一番怖いだろという普遍的なテーマを扱っているし、極限状態に置かれた群集心理を見事に描いていたと思います。

 逆に、もう結末を知っているだけに、二度目を見ても平気なのかもしれないけども、それでもやっぱり積極的に見ようとはどうしても思えない。見なけりゃよかったとすら思ったくらい。

 グロい場面もいくつかありますが、根本はパニックサスペンスですので、ホラーが苦手な人でもまぁ大丈夫でしょう。グロシーンは重要ではないので、目をつぶっておけばよいです。エンディングの後味の悪さについて覚悟のある人はご覧あれ……。

 あ、ネタバレ部分の最後の文章を先に記載しておきます。

 後味は最高に悪いですし、二度と見たくない映画ですが、脚本は練ってあり、面白い映画だったと思います。なので評価が難しい。超面白い! 絶対おすすめ! とは思わないですが、「二度と見たくないけどつまらないわけじゃない」。そんなバカな評価があるかという。あるんだなこれが。フランク・ダラボンマジックかな。

 さて、ネタバレになるのでこの先はご注意を。

続きを読む

ファミコン版のドンキーコングで分からないこと

 私のゲームの原体験に近いところに位置するソフトがファミコン版のドンキーコングだ。

 このアーケード版から1ステージ削られボリュームダウンし、内容も複雑とは言えないゲームを今でもたまに遊ぶのだが、今だに分からないことがある。35年も前のゲームだし解析している人がいるのではとふと探してみるが、いつ探しても見当たらない。

続きを読む

黒船室内管弦楽団 第8回定期演奏会

 先日の黒船のアンケートをようやく読む。回収率高し、かつ絶賛ばかりで嬉しい限り。

 クラシックの宿命か、高齢の方が多いが、あれくらいの年代の方は若い頃にクラシックをレコードで聞いて育った世代。だから、カラヤンだとかの巨匠、ベルリンフィルだとかの世界最高峰のオケが比較対象になる。それでも万雷の拍手を頂けるのは、ひとえに団員の皆さんの努力や気持ちの賜物。指揮者はこういう音楽をやろうと身体で表現して導く係であり、実際に音を出すのは奏者。指揮者というのは本当に不思議な立ち位置で、指揮者がどんな有名人でも、奏者が音を出さなければ音楽は成り立たない。だから本番は奏者の力あってのもの。

 とはいえ、褒められればやはり嬉しいものだ。毎回アンケートに開演前の話、指揮のどちらにもお褒めの言葉が書いてあって、とても励みになる。

続きを読む

自分に依って生きる

 以前、ある人から助言をもらい、それに沿った行動をしていた。その人のことを信頼していたのに加え、そうしなければダメだと強く言うからだ。しかし、ある人から、その行動によって迷惑だと言われた。いずれそういうこともありそうだと予感はしていたが。

 誰かに言われたからやるというのは、自分のための行動ではない。誰かに言われたことを実行して損をするなんてバカバカしいにもほどがある。言った人は何の責任も取ってくれない。それを実行したのは自分の意思だ。だから結局自分が悪い。それなら自分がそれでいいと思ったことをやって損した方が、納得いくし気持ちがいい分、数百倍マシだろう。

続きを読む