名付けるという行為の重要性

 名付けるという行為は人間にとって本当に大きな意味を持つのだなぁと思い知りました。

 2年ほど前から、近所で高層マンションを建てる工事をしております。ここにも高層マンションを建てるのかという感じで冷ややかに見ていたのですが、そのうちに赤と白に彩られた巨大なクレーンが設置されまして、なんとも無機質で気持ちの良くないものだなぁと思っていたのです。

 ところが、ある日突然、そのクレーンに「ムサシ号」という看板が付きまして、名前が判明したわけです。そうしますともう完全に見方が変わるんですね。気持ちはもう「ムサシ号頑張れ!」ですよ。今日はムサシ号元気かな……。今日も一生懸命働いているかな……。ムサシ号、いつかいなくなっちゃうんだよな……。そんな思いを胸に抱くようになってしまいます。これはすごいことだと思いますよ。

 暫くすると2台目のクレーンがやってきまして、「コジロウ号」と命名されました。もはや巌流島ですよ。というか君たち、なに仲良く一緒に働いてるんだよと突っ込まずにはいられないわけですが、毎日毎日文句も言わずに重いものを持ち上げているムサシ号とコジロウ号の勇姿に和んでおります。たまに間違えて「ムサシ丸」と言ってしまうのですが、剣豪が一気に角界に変化しますね。どすこい。

 名前を付けると途端に愛着が湧く。大変勉強になりました。