投稿者「185usk」のアーカイブ

TAR / ター

 ベルリン・フィルのシェフに選ばれた女性指揮者の話ということ以外、予備知識無しで鑑賞。結果、一回の鑑賞では全てを理解することが難しい映画だった。

 入念に取材し、オーケストラ、クラシック音楽、指揮者というものを深く書き込んでいたのは間違いない。特にオーケストラの演奏シーンのディテールは過去に見た映画の中で最高だったように思う。舞台袖の雰囲気なんかも、そのまんま。音楽映画(ドラマ)は粗が見えてしまう作品がほとんどなのだが、全く粗が見えなかった。
 主演のケイト・ブランシェットもちゃんと指揮者に見えた。こういう指揮者、いるよねと。実にリアルだ。リハの場面も生々しかった。ちゃんと指揮者に見えたどころか、こういう指揮者がベルリン・フィルにいてもおかしくないとすら思えた。指揮の演技をする役者が指揮者に見えたのは初めてかもしれない。
 オケも指揮者もまさしく現実と同じといって差し支えない。これはすごい。それだけでも一見の価値ありだろう。クラシック音楽好きなら十分に楽しめると思う。逆に、クラシックのことを知らない人は、何を言っているのかさっぱり分からない部分も多いと思われる。
 検索して上位に出てきたレビューをざっと見てみたが、クラシックのことを知らない映画通は「ベルリン・オーケストラ」だとか「世界最高のウィーンの音楽会」だとか、いい加減なことばかり書いていた。

 だが、実はこの映画の本質はそこではない。音楽映画ではなかった。そこを間違わないようにしたい。

 サイコスリラーという紹介もされているようだが、それもいまいちピンとこない。とにかく監督の意図に翻弄されっぱなしの158分。158分という近年では長めの上映時間だが、長いとは感じなかった。ほとんどが会話シーンなのに。上質なドラマが描けているという証拠なのではないだろうか。

 ここまで丁寧にオケを描けている映画はそうそう無いので、有名な日本人指揮者にプロモーションをしてもらえばもっと話題になるのではと思った。少なくとも私はそういうプロモーションは見ていない。もったいないな。クラシックのことを知らないタレントでは説得力のある宣伝はできないのでは。

―――――以下ネタバレあり―――――

続きを読む

ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ・ムービー

 最高のファンムービー。それ以外に言いようがない。

 物語はあってないようなもの。典型的な「苦悩から歓喜へ」の、ベートーヴェンの交響曲第5番形式だ。このキャラを出したいからこういう筋書きにすると逆算されたようにも感じる。

 が、そんなものは些細なこと。最初から最後まで、隅から隅までサービス心に満ち溢れた、ゲームを原作にした映画の傑作と言って差し支えないだろう。
 ゲームを知らない人にとっては評価が下がるとは思うが、それでも一本のエンターテイメント映画として成立している。

続きを読む

シン・仮面ライダー

 仮面ライダーは一シリーズも、一話足りとも見たことがない。でもやっぱり見に行った。昨年購入した映画館で使える割引券の期日が迫っていたからだ。じゃなかったら行かなかったかもしれない。

▼以下ネタバレあり▼

続きを読む

WBC2023日本代表優勝す

 はぁ~最高でしたね……。
 前日の準決勝、日本vsメキシコ。不振の村上野手復活のサヨナラ打に、こんなやらせにしか思えない筋書きあるか!?(と言いつつ、あの場面は絶対打つと確信していた)と思いながら歓喜に湧いた夜でしたが、今日もまたあからさまにやらせくさい最高の展開が待っているとは誰が想像したでしょうか。

 8回裏にダルビッシュ投手が一発を浴び1点差に詰め寄られるも、後続を打ち取って、そのままの点差で9回裏の守備へ。
 クローザーに指名されたのは大谷投手。打者が塁に出なければ3人目の対戦相手が現役世界最高打者と言って差し支えないマイク・トラウト野手。しかも大谷選手の同僚。
 1人目を歩かせて、そう上手くいかないかと思っていたらなんと2人目が併殺。2アウトでトラウト野手との対戦へ。
 フルカウントまで盛り上げて最後は伝家の宝刀スライダーで空振り三振。世界一決定。

 今どき、プロがこんなベタなシナリオ書いたら怒られるやつですよ。それだけに最高の王道シナリオであるのも間違いなく、それが現実で起こるなんて、やっぱりそういう星の下に生まれた人というのはいるのだなと思うしかありません。

1997年 横浜ベイスターズ リーグ優勝の瞬間
2009年 WBC決勝 日本vs韓国 イチロー野手の決勝打
2023年 WBC 準決勝村上野手のサヨナラ打と優勝の瞬間

 これを全てリアルタイムで目撃できて幸せです。
 おめでとうございました!

(あ、勝利投手は今永投手だそうです。ダブルでめでたい!)

ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)

「月面探査記」から4作連続の劇場鑑賞でしたが、ここ4作で一番良かったです。

 ゲスト主人公の発声に違和感があると思ってエンドロールを見たらやっぱり……。一番最初のセリフで察しますね。こういうことがあるたびに、本職の声優って凄いんだなと思い知らされます。でも作品を壊すという程度ではないし、ヘタクソとまでは感じませんでした。たまに聞いていられないほど酷い人いますからね……。あと、出木杉くんの声がいつまで経っても違和感があるのですが、どうも日テレのアナウンサーらしい。日テレのアナウンサーといえば、「美味しんぼ」の歌子さんも酷かったな。日テレの伝統芸なんでしょうか。それ以外のゲストは気にならず、中でも山里さんは凄い。もはや本職と比べても遜色ないのではというレベル。

 あと、服部隆之さんはオケの書き方が本当に上手いなと思います。今、劇伴でオケを使わせたらトップクラスの安定感なのでは。

 劇場に入るときにもらった冊子に誤りを2つ見つけてしまいました。

・4ページ:ソーニャの説明が「やさしくて」のはずが「やさくして」になっている。
・16,17ページ:まちがい絵さがしの間違いが8つのはずが9つある。

 以下ネタバレあり。

続きを読む

判例主義

 これは……。

三春町ひき逃げ2人殺人事件 一審の死刑破棄し「無期懲役」判決 福島
https://news.yahoo.co.jp/articles/391a1fd2355fe61aa32679759d7ab5582239455e

 これで無期なら、「刑務所に入ることを望む場合、2人までなら殺していい」という判例になってしまわないですかね……。
 判決文が無いのでなんとも言えませんが、検察には上告していただきたいなと思います。

シン・ウルトラマン

 ガワがウルトラマンになっただけで、やってることはエヴァンゲリオンと同じ。日本映画だからCGのレベルの低さは仕方ないけど、とにかくドラマの書き方が薄っぺらすぎて感情移入が全くできなかった。バディがどうの信頼がどうのと言ってるけど、そんな仲良くなる描写あった? カメラに映っていない部分を勝手に想像しろってこと? 奇をてらったカメラワークもわざとらしいし、台詞回しも良くない。役者の演技も……ここまでくると、むしろわざとやってるんだろうか。鎌倉殿でも思ったけど、山本耕史さんはいい役者さんですね。同じ庵野ウルトラマンなら、DAIKON FILM版の方が面白かったな。

伝統と文化

 歴史とともに培われてきた伝統を「ぶっ壊していい」などと公言する人間は信用できない。その人にその世界を語る資格は無い。「共存すればいい」なら別だが。
 それを正論だなんだのという意見が多数にな(っているかのように報じられ)ている。世間の価値観は大丈夫なんだろうかと心配になる。

続きを読む