ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ

 見よう見ようと思いつつ、4時間近い長尺に二の足を踏み、見ていなかったのですが、強くおすすめされたので見ました。結論から言うと、面白かったです。体感でまだ2時間半くらいかなと思った辺りで終わり。

 構成がつい先月見た「アイリッシュマン」にそっくりで、なるほどこの映画の影響は絶対にあるなと。「アイリッシュマン」もそうですが、これも最低2回は見ないとダメですね。

 モリコーネの音楽……素晴らしかったです。ああ、この人は天才だなとスッと納得できました。

 そしてケーキのシーン、最高でしたね。何から何まで上手すぎる。映画っていいなぁと思ってやまないシーンでした。

 老年ヌードルズ(しかしすごい名前だな。本当にある名字なんだろうか)が訪れる墓地のシーン。扉を開くたびに音楽が流れて、流石にふふっと笑ってしまった。ほんと申し訳ないけど、あの場面だけはコントに見えてしまった。

 いくつか分かりづらい場所はありました。

 老年ヌードルズの場面。
 アタッシェケースを手にして道路を歩くヌードルズに投げつけられたフリスビーは何? 最後まで分かりませんでした。意味ないのかな。

 ヌードルズがコーヒーをティースプーンでかき回す場面。
 砂糖もミルクも入れてない(はずだ)し、なんであんなに執拗にかき回したのか。途中で何かあるのかと思ったら、あれだけ長い時間を取りながら何もなかった。ヌードルズの考えがまとまるのを全員で待っていた描写?

 ラスト付近のゴミ収集車。
 素直に見ればマックスが自殺したと思えるのですが、血が描写されていなかったので、謎が残ります。
 ヌードルズが依頼を遂行してくれなかったときの保険として、マックスが待機させていたのではないかと感じたのですが、果たして……。拳銃自殺だとデボラが悲しむから、行方不明扱いになろうと。

 そしてラストのヌードルズの笑顔。
 見た瞬間の解釈としては、阿片の作用で純粋で幸せだった頃(幼年~少年の頃?)の幻覚を見た。もしくは、張り詰めた精神、日常において唯一安堵できるのが、阿片を吸っている一時だけなんだ。という哀しさの表現なんじゃないかと。
 終始一貫して、青年期以降のヌードルズが破顔する場面は無かったように思います。それどころか、笑う場面すらほとんど無い。フランキーが連れてきた男の保険の話に作り笑いするところくらいじゃないですかね。
 それくらい自我が強く、鋼鉄の精神を持ちながら、本当に欲しい物は手に入らず満たされない哀れな男が見せた満面の笑み。切なくなりました。