シン・仮面ライダー

 仮面ライダーは一シリーズも、一話足りとも見たことがない。でもやっぱり見に行った。昨年購入した映画館で使える割引券の期日が迫っていたからだ。じゃなかったら行かなかったかもしれない。

▼以下ネタバレあり▼

 冒頭からいきなり血みどろ展開で、あ、そういうやつなの? と困惑気味に。ターゲットは完全に大人であることを把握。
 しかし日本のCGは絶望的だ。ヒロインからクモが出てくるシーンで頭を抱えたくなってしまった。さらに主人公がクモの糸で拘束される場面。あれくらい、もう少しなんとかならないんだろうか。技術的な詳しいことは分からないけれども。
 主人公の池松氏は「銀と金」の森田役で見ていたので知っていた。抑えた演技と言えば聞こえはいいけれども、どうしてああまで棒読みなんだろうと不思議に思う。あれが業界では上手い演技ということなんだろうか。本作だけなら、そういう演技指導なのかとも思えたが、「銀と金」でも全く同じで、どうしてこんなに棒読みなんだろうと思いながら見ていたので、個人の素質のようにも思える。が、まだ比較対象が足りないので確信は得ていない。ただし、実に画面映えするというか、一度見たら忘れられないというか、纏っている雰囲気はすごくいい役者さんだと思う。演技がどうこうで嫌いになれる役者ではない。これも才能。
 浜辺氏はほぼ名前しか知らなかったが、アップに十分耐えられる美しさを持っていて、演技もできるのだと初めて知った。本作で一番演技が出来ていたんじゃないだろうか。本当はものすごく小顔なんだろうけども、肩幅が狭すぎるせいで頭が極端に大きく見える(レザーコートを着ているのに!)カットが何箇所もあり、出来の悪いCG、不気味の谷を見ているようで怖くなってしまった。実際に会ったら信じられないほど細いんだろうな。これで22歳とは恐ろしい。上手く歳を取れれば大女優になれるのでは。基本的に芸能人や芸術家の個人・素性には興味がないのでSNSをフォローしたりはしない。
 あとは一文字役の柄本氏。弟は何度か見たことがあるが、兄は初めて見た。弟の方が顔のインパクトは遥かに強いし父親似だと思うものの、兄は二枚目役も行けるし演技も良い。一瞬、役のためにイメージチェンジをした松山ケンイチかと思った。似てない? 今回一番人間らしい、いい役だったのでは。
 あとはサソリオーグ。強い印象を残して暴れてあっという間に退場したので、どこぞの事務所が推すグラビアアイドルかなにかを起用したのかと思ったら、エンドクレジットで出てきた名前はまさかの長澤まさみ。これには度肝を抜かれた。役者の格的にはハチオーグのはず。あんな仕事するんだ……。いいと思います。
 基本的には見せたいシークエンスがあって、そこを見せるために話の辻褄を合わせて繋いでいるような印象を受けた。2時間では足りていない関係だと思われるが、特に前半から中盤に多く見られた唐突な場面転換や、前後関係の欠落がそれ。そしてダサさと格好良さの絶妙な両立。これらはもしかしたら原作リスペクトなのかもしれないが、私には分からない。
 最後のおじさん同士の単なる取っ組み合いはもうなんというか……それが見せたかったんだろうな以外感想の言いようが無い。超人要素皆無の泥仕合である。見どころと言えるかもしれない。
 全体を通してはシン・ウルトラマンより全然楽しむことができた。ゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダーと見て、ウルトラマンだけ異常に評価が低いことを考えると、庵野監督ではなく樋口監督と合わないだけなのかもしれない。まぁでもハビタット世界って人類補完計画なのでは? また同じことやってないか? と感じてしまうのはエヴァンゲリオンを作った者の宿命なんだろうか。
 本作を仮面ライダーファンが見たらまた全く異なった感想になるのかもしれない。以上はあくまで一本の映画として見たときのお話。