緊急事態宣言が出るかもしれない瀬戸際ですが、強制力が無いので飲食店に対して意味がないのではという意見があります。飲食店はそうかもしれませんが、練習や本番で公共施設を使用している我々舞台の人間は、有無を言わさず無職になるでしょう。行政が施設の使用停止を申し渡すため会場を使わせてくれないからです。
民営とは名ばかりで、大抵の会場は母体が行政のため、お上の決定に逆らえないし、おかしいと考えて意見を言って議論できる職員などいないのです。じゃあ君たちはお上が人を殺せと言ったら従うのかと言いたいです。
飲食店をどうにかするという理由だけで緊急事態宣言を出されますと、舞台業界が相当深刻な状況に陥るのは想像に難くありません。
幸いにもオーケストラでクラスターが発生したという事例はまだ耳にしていませんし、日本オーケストラ連盟等が共同で行った実験では、オーケストラの演奏会は演者、観客共にリスクは低く、感染対策を施し観客のマスクの着用を徹底し、一部の金管楽器のみ若干距離を空ければ、コロナ以前の形態で公演を行っても問題ないと思われるという結論が報告されています。
事実、昨年末のN響第九もウィーンフィルのニューイヤー・コンサートも、第九の合唱こそ半分にしていましたが、それ以外はほぼ通常と変わらず、弦楽器もマスク無しでプルトを組んでいました。
ですが、公共施設を使用している我々は未だに、指揮者はマスクとフェイスシールドを付けて奏者から5m離れろ、弦楽器でも2mの間隔を開けろという、何の根拠も無い滅茶苦茶かつ馬鹿馬鹿しいことを真顔で強要し、仕事をしている気分になっているだけの人に理不尽なお役所対応を受けています。
繰り返しになりますが、緊急事態宣言には強制力が無いですから、飲食店は営業を続けることができるかもしれません。ですが、感染リスクが低いにも関わらず、舞台関連は強制的に無職に舞い戻ることになるでしょう。
前回の緊急事態宣言の前後、2月から8月中旬まで、丁度6ヶ月半無職になりました。その後、少しずつ回復していますが、2021年になった現在もコロナ以前の1/5程度にしか仕事が回復していません。施設がまともに使えないからです。1/5でどうやって生きていけと。私の知り合いは早くも5月まで仕事無しが決定しているそうです。
緊急事態宣言を出して活動を停止させるなら、持続化給付金をもう一度やってもらわねば到底納得できるものではありません。リスクの高低に関わらず無理やり仕事を奪っておいて保障しないというのは道理に合わないでしょう。
今回緊急事態宣言を出せば、前回よりも長期間に亘ることが予想されます。ですから、対象とする業界をきちんと分け、打撃が最小限で済むよう、明確かつ細やかな対応をしないと、音楽に限らず本当に危険であると思っています。
コロナを食い止めるのが最優先。それは分かります。やるべきでしょう。そのための緊急事態宣言。もちろん出来る限りのことをすべきでしょう。ですが、緊急事態宣言を発令しますと言うだけなら三歳児にだって出来るんです。大切なのはその中身と、合理的な保護策でしょうと声を大にして言いたいです。それが出来ず、ただ言って投げるだけなら、ゴリラにウンコを投げつけられたのと同様と感じても仕方がありません。
政治中枢には官僚を筆頭に、日本でも指折りのアタマノイイヒトタチが集まっているはずなんですから、バランスの取れた施策が発表されることを願っております。日本のトップの正体がゴリラなのか、はたまた人間なのか。人間であることを祈りたいです。
私は、舞台業界人はもっともっと怒りを発していいと思っています。ここまで相当不条理な目に遭い続けているはずですから。