結成から5年目で第5回という節目の定期演奏会でありました。
大学祝典序曲、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ブラームスの交響曲第1番という大変重いプログラムでありまして、よくこんなの選んだなと黒船の乗組員の皆さんのやる気に驚いたものでした。ドイツ、ロシア、ドイツ。実に脂っこいですね。だがそれがいい。
結果といたしまして、節目の演奏会にふさわしく、黒船史上最高の演奏になったのではないかと思っております。私はと言いますと、ああしたいこうしたい、テンポが速いと言われつつも、いやこれでいくと我を通したりしていただけでして、演奏の良し悪しについては奏者の皆さんの努力の賜物であろうと思う次第です。
ブラームスの1番のコーダ以降なんかは、クラシックに興味が無い人が聴いても「クラシックっていいな!」と思っていただけるだけの熱量を持っていたと思っておりまして、クラシックを敬遠しているあの人に聴いてほしかった、この人に聴いてほしかったと色々思い浮かぶのですが、そういう方にそもそもご来場いただけないというのは、ひとえに私の力不足、人徳の無さであろうと痛感しております。
好き嫌いを抜きにして本当にいい演奏に出会えるか出会えないかというのはほぼ運でして、今日の演奏は何としても聴いてほしかったというのは終わった後だから言える結果論ではあります。だからこそ、一度聴いてイマイチでも粘り強く足を運んでいただきたいと思っていますし、毎回お客様に満足していただこうとこちらも必死になるわけです。
クラシック音楽というのは、作曲されてから200年近く経っても人類の心を熱くさせる普遍的な力を持ったものだと思っております。知っている知っていないに関わらず、本当にいい演奏を聴いた場合、無条件で心の中に飛び込んできて、人の感情をダイレクトに揺さぶってくるのです。この体験をした事があるかないかで、音楽そのものへの向き合い方すら変わるものであると思っております。
ブラームスの1番というのは私にとって特別な曲でして、詳細はこのような場所に書く事でもないので割愛しますが、今回で2回目の指揮となりました。1回目は2年前にけつおけ!にて。はっきり言ってしまいますと、けつおけ!の方が奏者一人一人の技能は高いのではありますが、当時の私にはまだ手に負えない曲であったか、もしくは1度本番をこなした事による変化か、今回の方がアプローチや曲の作り方、理解に関してははるかに充実していたと感じております。
自分にとって特別な曲すぎるがあまり、ある意味呪縛に憑りつかれていた部分があるのではありますが、今回その呪縛から少し解放され、一歩進む事ができた気分です。黒船の皆さん、本当にありがとうございました。
アンケートに「指揮者の30年後が楽しみ」なんてことが書いてありました。指揮者でない方から見ればバカにしてるのかと捉える向きもあろうかと思うのですが、私にとってはこれは相当な褒め言葉だと思うと同時に、書いた方はかなりクラシックに詳しいのだろうなと感じた次第です。是非30年後の私をご覧いただきたいと、そう思うわけです。年齢的にはようやく巨匠への入り口に立ったくらいでしょうか。あくまで年齢は、です。30年経っても16歳ですけどね。
そんなわけで、次回は秋の黒船音楽祭。メインはシューベルトの交響曲第3番です。わずか18歳という若きシューベルトが書き上げた交響曲。果たしてどうなりますか。がんばります。がんばりましょう。