前回の続きです。
著作物の公正な利用とは何なのでしょうね 〜前編
http://blog.185usk.com/2014/11/post-111456.htm
私は常々、著作権とは「使わせない権利」ではなく、「使ってもらうための権利」であると主張しているのですが、日本の音楽著作権を取り巻く事情は前者に偏っているのではないかと思うわけです。権利を独占して第三者による利用を排除するのが文化の発展に寄与するとはどうしても思いにくいのですね。
それについては、どこで線引きをするのかが曖昧すぎますし、ひとたび認めたら雪崩をうってしまう可能性があるため、とにかくどれもこれも違反とするしかないというのもよく分かります。法律は社会科学であり、数学のように綺麗に答えが出せるものではないのが実に厄介なところです。
アウトセーフの感じ方も人それぞれでしょうし、それを最終的に判断できるのは司法のみであり、結局のところ判例が無い以上、法律を知り、意識しつつ上手くやっていくしかないという事になるのだとは思います。だからこそ、グレーな部分と言うのが非常に重要な意味を持ってくるわけですね。
私の個人的な判断基準としては、
・大きな額が動く利益追求のための利用ではない
・著作権者に著しく経済的な損失を発生させない
・犯罪を意図したものではない
・著作権者の名誉を著しく毀損するものではない
この辺りが適当なのではないかと思います。簡単に言うならば、無断でビジネスにするなよというところでしょうか。しかしながら、これでもまだまだふわっとしていて、全てのケースに綺麗に当てはまるものでは決してないです。
例えば、
・売上1万枚を想定してCDを制作し全国のCDショップに並べた
これはダメでしょう。十分に利益目的であると言える数字だと私は思います。じゃあ何枚ならいいのという議論になってしまいますと、分からないので一律ダメという事になってしまうのですが、その辺りの匙加減は阿吽の呼吸しかないのではないですかね。
また、本来得られたであろう多額の金銭を得る機会を損失させていると言えるでしょう。
・原盤をそのままコピーして売った
これはダメでしょう。明らかに犯罪的な行為であると断定する事ができます。
・自分の稚拙な演奏やアレンジを、著作権者名義でCDにして販売した
著作権者が許可したと誤認させ、このような曲を作るのだと周囲に思わせてしまえば名誉を毀損すると言えますので、ダメでしょう。逆に言えば、誰それの曲を自分で独自にジャズ風にアレンジしましたと言ったところで、著作権者の名誉を毀損する事にはならないのではないでしょうか。PE’Z事件なんかは該当しそうです。
最もハードルが低くなければならない(と私が思う)ケースで話しますが、著作物利用の例外規定に合致するアマチュアの無料のコンサートで演奏を認めないケースがあるという話を聞いたことがありますが、いったいどういう了見なのか理解が出来ないというのが正直なところです。
法律上対抗できない事が分かっているからか、例外規定が及ばない編曲権を盾にして半ば脅しのような事を言ってくる場合があるという話のようなのですね。
これはまだ誰もやった事が無いと思うのですが、例えば自分たちで完コピをして楽譜を作って演奏したら、果たしてどのように主張してくるのか気になります。原曲をそのまま耳コピして楽譜を作る事は編曲にはあたらないものと思われますね。
同一性保持の観点から、原曲と違う音符があるですとか、譜割りが少し違うですとか、間違いがあるですとか、厳密な事を言えばいくらでも対抗されそうなのですが、市販の楽譜でも平気で間違っているものはすごく多くあるわけです。では音楽の同一性とはいったい何ぞやという論争になりそうです。
BPM60で四分音符でドレミファソラシドと記した楽譜と、BPM120で二分音符でドレミファソラシドと記した楽譜は、楽譜を介さなければ聞く側には全く同一な音の配列に聞こえるわけで、書き方が違うから同一性保持に反していると言えるのかどうか。音楽上はもちろん意図が違ったりするのではありますが、裁判所はどう判断するのか。
そんな事を考えていますと、やはり誰かがチャレンジャーとなりフロンティアスピリッツを持ってして裁判所へGOという流れを期待したいのですが、無理でしょうなぁ。totoで1等でも当たれば私がやってもいいのですが、先立つものがございません。
とか書いてたらふと思いついたんですが、クラウドファンディングで裁判費用を集めるプロジェクトとかどうなんですかね。反社会的だとして受け付けられないでしょうか。すごく興味がありますね。まぁ集めたところで訴えられなければ遂行できないのではありますが。
また、最近私が聞いた話では、著作権者の側からあれこれと話が出てくるのならまだしも、どういうわけか、ゲーム音楽に関わっているアマチュアの方の中には、やたらと他人が行っている行動に敏感で、無関係な外野からああだこうだと言う方がいるのだというではないですか。人の事なんてほっとけと思いますので、不思議でなりません。
著作権を勉強する事はとても大切ですが、だからといって他人がやっている活動を指して違法だのなんだのと文句を言う行為が何かのプラスになるのですかね。そういう事を言う輩がいたら外野は黙ってろと言って差し上げればよいかと思います。
違法が許せないのならば、ネットにおける全ての著作権法違反に目を光らせ、トゥイッターでもなんでも四六時中監視して指摘してればいいんじゃないかと思います。出来るものならやってみろと思ってやみません。そんな事を言いだしたら、YouTubeやニコニコ動画なんて著作権法違反の巣窟であって、怪しからんので今すぐ潰すべきという話になりかねません。Twitterで漫画のコラ画像をアップしている人にも是非バンバン指摘していただきたいですね。そういう事に関してはどう考えているのか聞いてみたいところです。違法な状態を本気で憂慮しているのならば、他人を攻撃している暇があったら、社会を変えようという方に努力すればよいと思いますね。私が聞き及びました不快な思いをされたという方には同情いたします。
若干脱線しました。著作権法第1条の話に戻りますが、コンサートというのは特に実演の分野における音楽文化の発展と維持において、非常に重要なポジションを担っているものと思います。盛んにコンサートが開催されるというのは喜ぶべきであり、ましてや善良なる市民が行おうという行事に対し、権利をちらつかせたり振りかざすというのは、文化の発展に寄与するという著作権の考えに反するものではないかと思うわけです。
1.この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
この文言を今一度考えてみるのもよいのではないかと思う次第です。
アメリカでは著作権に関してフェアユースという考え方があるのですが、日本では認められておりません。これが認められるだけでも状況は変わってくると思うのですが、導入すると言われつつ今だそうした気配が見えてこないのが残念であります。するする詐欺に終わってしまうのでしょうか。
長くなって力尽きましたのでフェアユースに関しては説明を割愛しますが、簡単に言いますと、誰も損してないだろJK、というケースは著作権法違反ではないという概念です。
法律と言うのは世につれ変わっていくべきものですので、現状を絶対のものととしてただ黙って従うのではなく、実態にそぐわないような事があるならば、多くの利用者が考え、議論し、声を挙げていくことが大切ではないかと思います。
※著作者と著作権者は別ですが、文中では著作権者に統一しています。