陸前高田にオーケストラをが終了いたしました

 3月の顔合わせから4ヶ月と少し。全8回のリハーサルを終えての本番でした。

 前回2013年4月に第1回が開催され、それから約1年半の時を経て、今回第2回が開催されたわけですが、集客、演奏等、全ての面において、前回よりもグレードアップできたと言って良いであろう内容だったと思います。今回は言い出しっぺがきちんと現地に行けたのでよかったなと。前回は来られなくなった彼の分もという意気込みがあり、それはそれで団結が強まった感もあったのですが、やはり出られるに越したことはないです。

 私が音楽活動をする際に心がけている事の一つに、「関わった全ての人が笑顔になれるように」というものがあるのですが、これは巡りあわせや、その時々の環境に大きく左右されるものですので、なかなか簡単に出来るものではありません。ですが、全てを終えて振り返ってみますと、今回はそれをある程度において達成出来たのではないかと思うことが出来た、なかなか稀有な公演になったものと感じています。

 そもそもきっかけは、言い出しっぺが現地にお住まいの方からオーケストラを聞きたいと言われ、それならやってみようじゃないかというところから始まった企画です。始動の段階では、アンサンブル、多くても室内楽程度の編成でも集まれば御の字だろうと話していたのですが、蓋を開けてみれば第1回公演から70名もの奏者が名乗りをあげてくださり、想定外の事態にリハーサル室に入りきらないなどという事もありました。

 私も含めですが、多くの方が言っていたのは、何か出来る事をしたいと思っても、果たして音楽が何かの力になれるのだろうかと。震災直後は、音楽ができる事の限界を見せつけられた気がして、打ちひしがれた時期もありました。私以外にも、個人レベルでそういった悩みを抱えていた方たちはいらっしゃったのだろうと。それが、いざ誰かが企画として立ち上げた際に、そういうのがあるなら力を貸すぜと共感してくださった方が多かったという事なのかもしれないなと。

 今年は昨年を大きく超える数のお客様に来ていただく事ができました。昨年いらしてくださった方もたくさんいらっしゃいました。私達の事を覚えてくださっていました。本当に温かいお客様方で、常に大きな拍手と笑顔を向けてくださいました。これほど嬉しい事はありません。私達が喜びを得るために行っているはずではないのですが、逆に大きな力を頂いてしまった気がします。お客様から「絶対また来てよ!」「気仙沼にも来て!」などなどのお声を頂いた事、終演後にお客様からたくさんの握手を求められ、直接御礼を言われた事は私は忘れないと思います。本当にありがとうございました。まだ第2回が終わって間もないので、第3回を実現できるかは未知数ですが、もしタイミングなどに恵まれ、出来るようであれば全力で頑張りたいと思います。

 お客様はご高齢の方や小さなお子様が多く、トゥイッターやフェースブックをやられている層とはかぶりません。ですから、陸前高田にオーケストラを、がネットで口コミで話題になる事も、活動が有名になる事もないでしょう。ですが、それでいいのです。私は人に喜んでいただきたいという思いで指揮していますので、会場にいたお客様に楽しい時間を過ごせたと思っていただけたのであれば、それ以上望むことはないのです。音楽の本当の醍醐味はその場にいなければ味わえないものですので、むしろそれでいいのです。その場にいた人の心に刻まれればよいものなのです。

 大切なのは、有名になる事なんかではなく、長く続ける事であろうと思います。有名だろうと無名だろうと、とにかく続ける事です。あの日から早くも3年以上が経過し、被災地以外から震災の記憶が風化していく事は避けられないのだろうとは思います。今回、オケの皆さんに言い忘れたのですが、私は「支援」や「復興」と言った単語が不要になったその時が、本当の意味で被災地が復興したのだと言えると思っています。

 震災直後に陸前高田に行った時はただ瓦礫があるばかりで、数ヶ月前までここに人間が住んでいたとは到底思えない光景が広がっていました。本当に何もありませんでした。第1回公演で行った2013年は「土地」としての姿が見えかけていました。今回は巨大なベルトコンベアが建造されており、わずかながら人間の息吹を感じるようになっていました。ですが、元通り(という意味では二度と元には戻らないのですが)、以前のような平穏な生活が出来るようになるまでには、まだまだ膨大な時間が必要なのだろうという事は、実際に現地に行けばすぐに理解が出来ると思います。その日がくるまで、我々は忘れてはならないのでしょう。

 この企画に参加できて本当に良かったと胸を張って言えると思っています。話を持ちかけてくれた言い出しっぺ、大変な企画をまとめてくださった事務局の皆さん、参加してくださった奏者、スタッフの皆さん、場所を提供してくださった第一中学校の皆さん、残念ながら出られなかったものの声援を送ってくださった皆さん、色々とご尽力くださった関係者の皆さん、そして何より当日公演に来てくださった皆さん、その他全ての方々に感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 願わくば、またお会いしましょう。

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