文化芸術活動の継続支援事業

 SNSやYouTubeなんかで、文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」についてあれこれ言われています。
 大抵の論旨が「予算が余っているんだから皆で取りに行こう」「使い切らなかったら次に同じことがあったら文化にお金が回らない」といった、使わない方が悪いみたいな口ぶりなんですが、私としてはずっと違和感がありました。

 私の理解が及んでいないだけかもしれませんが、今回の支援は予算の3/4(ざっくりですが)が補助されるというものです。しかも、自分へのギャラは認められません。ということはつまり、結局持ち出しが発生するんですよ。
 例えば分類のA-1は上限が20万円。20万円の支援を受けようと思ったら、約26万円の予算を組む必要がありますから、結局6万円の出費になります。
 A-2の上限は150万円。これはつまり200万円の予算を組む必要があり、事業を実施すると50万円の出費となります。

 新型コロナでただでさえ収入がなくなり、お金を節約しなければならない芸術関係者が、わざわざお金のかかる事業を企画して実行するんだろうか? という部分に疑問符がつきます。
 申請すれば20万円もらえる、150万円もらえるという主張が多いですが、もらえると言っていいのか疑問です。これは給付金じゃないですよね。

 この施策で恩恵を受けるのは、既に何らかの事業の予定、もしくは終了した事業があり、元々の出費に対して補助されるという人たちだと思われます。負担が飛躍的に減るわけですから。
 ただし、その対象期間も2月26日から10月31日という限定されたものになっています。
 ですが、詳細の公表が7月に入ってからで、申請開始が7月10日と、対象期間の終了まで4ヶ月弱しかないような状態です。ですから、「支援金を貰うために今から事業を企画しましょう」というのはどうにもおかしいと思うわけです。文化への助成を減らさないために蓄えを減らせと言っているにすぎないのではないかと。

 ちなみに私も申し込みましたよ。どうせなら使おうと。誰の助けも借りず、統括団体にも属していないので確認番号も無く、完全に個人申請でA-2の審査が通りました。
 ただ、募集開始初日に申し込んで、そこから5回も差し戻しがあり(しかも毎回違う理由で。全部一度で伝えられるような内容でした)、ようやく交付が確定したのが9月4日でした。期限の10月末まで2ヶ月を切っているわけです。でも、予算が通らなければ企画は動かせませんよね。通る前提で色々と手配してしまって、あなたの企画は通りませんでしたなんてことになったら大変な損害が出ますから。そうこうしている間にも、会場の予約が埋まったりとどんどん実現性は薄れていきます。7月に申し込んで9月に交付決定、残り2ヶ月弱で全部実行するというのはちょっと無理があるのではないでしょうか。もちろん内容にもよりますが。
 ですので、私はもう通るという前提で、交付決定前の7月下旬から腹をくくって動きました。もし通らなかったらと考えると恐ろしいです。

 こんなギャンブルみたいなことを、多くの人に「企画しましょう!」「みんなで予算を使い切りましょう!」と言えるかというと、私はとても言えないです。言うなら「募集に合致する内容で、2月26日以降、既に使ったお金、または10月末までに使う予定のお金が元々ある人は申請した方がいいですよ」程度でしょうか。
 でも、だとすると、この施策で文化活動が活発になるのかと言われると……です。何がしたいのか良く分からないというのが、今回の助成に対する正直な感想です。

 しかし、今回初めて官公庁の助成というものに申請しましたが、まぁ手間がかかりました。ただ、持続化給付金でもそうだったように、不正を行う人達がいるので厳格に運用しなければならないのは、ある程度仕方ないとは思います。が、資料を見るだけで敬遠してしまう人も多いのではないでしょうか。もう少し簡素化、簡略化されればいいのにと強く思います(その後、時間を経るごとに申請方法が簡略化されていったようではありますが)。この辺は難しいところですよね。

 今回良かったのは、個人申請はその道のプロに限られています。私は申請が通りましたので、国がプロであると認めてくれたというお墨付きになりましたね! やったー!