美味しんぼがグルメ漫画なのに火加減を間違えて強火で炎上中

 この漫画を描いたのは誰だあっ!! と海原先生ならぬ読者が激怒して厨房に怒鳴り込みをかけ、絶賛炎上中で今すぐ美食倶楽部から追放という勢いの美味しんぼ事件でありますが、風評被害だと騒ぐ前に少し冷静になってみるのも必要かなと思った次第です。

■ シリーズ連載中である

 美味しんぼは100巻あたりを境に読んでいないので、どういう経緯で原発漫画になったのかよく分からないのですが(福島の郷土料理を取材にどうこうとかいうものではないかと想像)、とりあえず現時点ではシリーズの導入、途中であって結論ではないのですよね。

 ひょっとしたら、この後に京極さんが出てきて「いや、待ちなはれ。この人らの言うてることはデタラメですわ。揃いも揃ってアホちゃいますか。科学的根拠は云々」とかいう(京極だけに)驚愕の展開が待っている可能性が無きにしも非ずではあります。とりあえず世間の耳目を集めるための過激な導入なのかもしれません。

 過去にもグルメ漫画の域を逸脱し、「MS-DOSじゃなくてSM-DOSだ」などとマイクロソフトを盛大にdisってみたりと、カリーこと原作者の雁屋哲氏の自論を展開したかっただけだろという回が散見される事実や、随筆などから察するカリーの思想の傾向、そして取材を基にしたとして実在の人物をモデルにしてしまっている事からすると、そのような展開が待っている可能性は限りなく低いんじゃないかと思わないでもないですが、ひとまず騒がずに結論を待つというのは一つの選択肢かなと。私としては「ああ、いつものカリーですね。相変わらずお元気でいらっしゃる」という感じではあります。

■ フィクションにすぎない

 感情的に不快に思い、つい攻撃的な反応を示してしまう人が多く見られるようですが、スマートだなと思ったのは橋下氏の対応。

橋下徹市長「美味しんぼ」を「フィクション」強調
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140512-00000018-tospoweb-ent

 橋下氏は法的措置などは考えていないとし、「フィクションで架空の話という世界の中での表現の範囲ですから。そこは十分、こちらも理解した上で作者に対して主張や抗議をしないといけない」と、今回の表現もマンガの中での出来事という認識を示した。

 引用元が東スポというのがアレで申し訳ないですが……まぁフィクションだし。と落ち着いた反応。確かにそうです。対立してしまう前に、あまりにお話にならないものであれば「フィクションに目くじら立ててもねぇ」と多くの人が余裕を持てるようになると良いのかもしれないなと。かといって、フィクションだと言えば何を書いても許されるのかというと、そうではないとは思いますけども。

 1999年に地球は滅びるという予言に本気で激怒していた人を見た事がない気がするわけで、それと似たような感じで、根拠のない暴論については「はいはいよかったですね」となっていければいいんじゃないですかね。ホットな話題ですし、実際に名指しされた地域で暮らしている方々がいらっしゃるだけに難しい事ではありますが。

 そもそも、元々科学を否定している漫画なのですよ。時空をワープできる登場人物が出てきて、主人公たちがそれを一緒に体験するんですから。夢オチではなく。「ワープなんかできねえよ! 科学を否定する美味しんぼはクソ!」とはならんでしょう。関係ないですけど、握り寿司に造影剤を混ぜて、お寿司をCTスキャンして横柄な板前をションボリさせる話とか大好きです。

■ 注釈はあったのか

 ここまで書いて思ったのですが、美味しんぼの注釈はどうなっていたんでしょうか。漫画には大抵「この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません」という感じの但し書きがありますが。もし、美味しんぼが取材に基づいたルポであるとするならキャラクター以外はノンフィクションに分類されるわけで、その辺りの但し書きがどうなっていたのか気になるところです。

 といいますか、報道やジャーナリズムを騙り、報道の自由を盾にして、とんでもないデマや悪評を言い触らしている自称知識人がたくさんいるように思えるのですが、そちらの方が漫画よりよほど悪質ですし、どうにかすべきではないでしょうかね。

■ 影響力の証でしょうか

 確かに多くの人の心にさざ波を立てる内容ではありますが、気に食わないからと、匿名で汚い言葉を並べて罵詈雑言をもって誹謗中傷するのはよくないと思いますけどね。冷静に、理知的に対処すべきであります。煽り煽られしていたら、いつまで経っても先に進めないですよ。誰ですか、バイキングに罵詈雑言を浴びせているのは。いけません、いけませんよ。

 あと、こんな書き方をして、いったいどういう結論にもっていきたいのかが気になります。「だから福島はもうダメなんです。真実を告発してやったぜフフン」とかドヤ顔したいだけだとすると、なんら建設的でもないし、それを発表して何か意味があるんでしょうか。どちらの結論にせよ、これを話題にするからには未来に繋がる何かがあってほしいなと。有名漫画を使って世に広く発表する以上、何かしら意図があっての連載である(と思いたい)はずであり、オを他人に見せたいだけなら、単発の読み切りとかカリーのブログでやれよという話ですから、結論まで待ちたいなと思います。雑誌は買いませんが。

 とはいえ、結論まで待つ間に発生した風評被害などはどうするのだという問題などがありますので、こういったセンシティブな内容は、連載ではなく、結論まで一気に見せる、もしくは入念すぎるほどの事前周知を行ったうえでやるべき内容ではないかなという気はします。全員が必ず結末まで見続けるとは限らないわけですし、一部分だけ読んで信じ込む人がいるかもしれません。それこそ雑誌売らんがなの商売優先の炎上商法と言われてもやむを得ない部分があるかと。

 しかし、なんだかんだでスルーされずにこれだけ話題になるのは、やはり美味しんぼは未だに影響力のある漫画だという事でしょうか。これが無名の漫画だったらここまでの騒ぎにはなっていないでしょうし。山岡さんの結婚以降、急速につまらなくなった感はありますが、一時代を作った偉大な漫画であるとは思います。

 っていうか初期の激カワ栗田さんを返せよ。

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