それは先週の事だった。
友人の結婚式の返信ハガキを最寄のポストに投函に行った。ほんの歩いて1分ほどの距離だったのだが、そのまま引き返すのではなく、区画を一回りする形で、少しだけ散歩でもして家に帰ろうと思い、普段と違う道を通った。
家から歩いて2分ほどのところだろうか。木でできた大きなドアが特徴的な、一見すると倉庫か何かかのように見える建物があった。
こんな建物あったかな? とよくよく見てみると、入り口の上の方に「○○○製麺所 ××店」と看板がかかっている。
これはもしかしてラーメン屋なのか? 普通は店先に出ているであろうメニュー表も、看板もノボリも出ていない。とてもラーメン屋には思えない。別に空腹ではなかったので、店の名前を覚え、検索しながら散歩を進めた。
検索してみると、妙に評価が高い。こんな辺鄙なところにあるのに? これはひょっとして隠れ家的な名店なのか? こうなると、行くという選択肢しかなくなる。
後日、夕食時に足を運んでみた。
客席は15席程度であまり大きくない。
メニューはつけ麺がメイン。麺の両は200g、250g、300gで、冷盛と熱盛から選べる(どれを選んでも値段は一緒)。
初回なので、店の名前を冠している○○○つけ麺を注文。あまり待たされる事なく出てきた。
このタイプのつけ麺の店は最近流行っている。たっぷりの量の太麺で、ポタージュかと思えるくらいドロッとした濃厚なスープに麺を絡めてズゾゾッといただく。
そういうタイプの一種かなと想像しながら待っていたら、予想を裏切られた。
麺は中太麺。むしろ細くすら見える。そしてスープはサラッとしてごく普通のラーメンのスープのようだ。流行のつけ麺とは真逆の印象で驚かされた。
見た目はどうあれ、肝心なのは味。
まずスープ。薄い。サラサラしている。つけ麺の既成概念と照らし合わせると明らかに薄い。味は……不思議の一言。今までに食べた事のない味だ。とにかく優しい味。化学調味料と添加物一切不使用と店内に張り紙がしてあったが、なるほどという感じ。なんだか否定的な書き方に見えるが、美味しい。しかし、果たしてこれが麺とからむのか?
麺。これだ。このためにこの店はあるんだ。と思えるくらい感動した。
こんなに美味しい麺、今まで食べた事がない。ラーメンとしてはありえないのだが、麺だけでも食べられるくらい美味しい。ふわっと小麦の香りがして、噛めば噛むほど味がする。ただの麺なので味なんて当然ついていないのだが、味がついている……。屋号に製麺所を入れているのは伊達じゃない。なんだこの麺は。
そこで分かったのが、この麺を最大限味わってもらうための、このスープなのだという事。
そのままでも食べられる美味しい麺を邪魔する事なく、強く主張する事なく、華やかさを添える。麺を味わうために考えつくされたスープなのではないだろうか。
ここまで読むと、スープはそれほどのものではないとお思いだろう。実際、私も食べている最中にそう思った。しかし、それは大間違いだった。
麺を食べている間に、カウンターに割りスープが置かれる。頼んでいないのに。普通は割りスープは自己申告制のオプションだ。それを有無を言わさず出すという事は、何かあるのだ。
普段つけ麺屋で割りスープは頼まないのだが、残ったスープに全て投入して飲んでみた。一度飲み始めると止まらず、ほとんど飲んでしまった。
これは参った。今までの人生で食べた中で、一番麺が美味しいラーメンだった。スープも全てのトータルで考えると非常にハイレベル。近所にこんなラーメン屋があったら通うしかない。
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というわけで、今日また行ってみたのでありました。名前はナイショ。知ってる人にはここまでの文章でもうバレてるかもしれませんネ。あまりに美味しかったので紹介してみましたよ。