いやいやいやいや。
「耳が聞こえないと感じたことは一度もない」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140206/ent14020615170005-n1.htm
・昨日のエントリー
佐村河内守氏の楽曲がゴーストライター作だったらしい件
ゴーストライターの話だけなら「ほーん、で?」という感じもあったのですが、全聾が嘘だったとなると一気に完全AUTO、真っ黒ブラックの様相を呈してきます。残すはご本人の弁だけでしょうか。新垣氏の言い分が100%正しいとは限らないわけですし。
この件、音楽的な話と感情的な話と道義的な話とがごちゃまぜになってカオスな具合になってしまっている感があるのですが、これらは切り分けるべきではないかと思うんですね。
その前に、音楽のことはよくわからんという人向けに例え話を。実際、家の建築は一人ではできないのですが、そこはご容赦を。
有名な建築士兼大工のS氏がいたのですが、実はS氏は家を作ることなど出来る人間ではなかったのです。S氏は仕事をとってきては、
「この土地に家を建てることになったYO。2階建て6LDKの車庫付きでヨロシク。1階に部屋が2部屋で、トイレが1つ、キッチンとバスルームも1階で。2階は4部屋でこっちにもトイレ。寝室は2階。外装のコンセプトはガウディっぽくして、内装は白川郷の古民家風で頼むわ」
とN氏に依頼します。N氏は「アイヨー」とS氏のオーダーを元に、完成までの残りの工程を全て一人で行うわけです。で、S氏は出来上がった家を、お客さんや世間に対して「これ全部私が一人でやったんですよ。すごいっしょ」と紹介したうえ、テレビや雑誌で取り上げられて天才だとか言われちゃってたわけですね。本当はN氏が9割以上やってるんですが。
よろしいでしょうか。
◆ 音楽的な話
さほど問題ないと思います。鼻歌だけ唄って、後の工程は全部人任せにして作曲でございって人はゴマンといますから。編曲なり何なりで新垣氏がクレジットされていれば、こんなことにはならなかったんだろうなあと。
漫画だってほとんど全部アシスタントが書いてる人がいるんだからという話もあるようですが、漫画はアシスタントの存在が明らかであり、そういう漫画家は私が全部一人で書いていますとは言っていないでしょうから、比較対象にはならないんじゃないですかね。
昨日のエントリーにも書きましたが、佐村河内氏名義の曲を聴いて感動した人は、実は新垣氏が作曲したものでしたという事実を目の当たりにしたところで、音楽そのものが持つ熱量は同じはずだから、覚えた感動に変わりはないはず。
曲が好きな人は好き、嫌いな人は嫌い。それでいいし、それ以上のものはないでしょう。新垣氏が作曲したのなら感動しないという人はいるんでしょうか。純粋に音楽としての評価が変わるべきではないと考えます。私は聴いていないので意見はありません。
◆ 感情的な話
別に私に被害を与えられたわけではないので何とも思いません。佐村河内氏と知り合いでもないですし。許せるとか許せないとかそういう感情はないですね。あー、やっちまったなぁ、これから大変そう……というくらい。鉄槌を下したいとか考えている人がいるなら怖いですね。そういう考えは捨てた方がよろしいかと。そんな暇あったら他のことやった方がいいですね。
◆ 道義的な話
ここが一番問題でしょうね。テレビの密着に対してすら、私が全部やってますと堂々と嘘をついてしまっているわけで、そんなつもりはなかったは通用しないでしょう。何百万人という人々に対して平然と嘘をつくことで自分の価値を高めたわけです。その嘘のおかげでCDがあれほど売れたという背景も間違いなくあるわけで、そのあたりで社会的制裁を受けることは避けられないかと。
さらに、全聾が嘘であるというのがもし事実ならシャレにならないですね。お金や名声のために障害をネタにしちゃダメでしょ……。これもうすごいご法度だと思うんですね。踏み入れてはいけない禁断の地ですよ。氏の話している映像を見て、中途失聴とはいえ、もう十数年音のない世界に生きているのに、こんなに明瞭に喋れるものなのかなという疑問はあったんですが、まさかまさかですよ。人って喋るときに自分の発声を聞いているわけで、それがないなら自分がどんな音を出しているかわからないわけですから、徐々に不自然な点は出てくるんじゃないかなと。この辺り、実際はどうなんでしょうね。誤りだったらすみません。ご指摘があれば訂正します。
耳が聞こえているかどうかは今後の情報を待ちたいです。
◆ 嘘
本に書いてあることも、ライナーノーツに書いてあることもほとんど嘘だということですから、彼の経歴など根本から疑われることになりそうです。いったいどの部分が事実なのというレベルで総ツッコミが入りそうです。
・ 自分が作曲していたという嘘
・ 全聾であるという嘘
少なくともこの2点の嘘については損害賠償など含め厳しく追求されるんじゃないですかね。話を盛るのはいいですが嘘はいかんよ嘘は。
◆ 新垣氏
真実を告発するのは勇気が必要だったと思います。が、被害者ではなく、長年嘘の片棒を担いできたというのは否定できない事実。同情したくなりますが、それはそれ。ご本人が一番よくわかっているのだと思います。ただ、書いた曲がヒットし、賞を獲得したことは事実ですから、今後も楽曲の発表などしていかれたらよいのではないかと。経歴等にダメージを受けるのはやむなしかと思いますが、この件で潰されたりしないといいなぁと。私なんぞが考えても余計なお世話ですけど。
◆ 佐村河内氏
新垣氏の会見が真実だとすると、やったことは灰色どころか超絶ブラック一発レッド即退場なわけですが、彼の仕掛けにより、交響曲のCDが普段オーケストラなど聞かない人も含めて18万枚も売れたわけですから、そういう才覚はあったのだろうなと思います。人を欺く方向に進んでしまったのが悔やまれますね。
このまま社会的に抹殺されそうな勢いですが、私としてはお詫びして禊を済ませたなら、また頑張ったらいいんじゃないかなと思ってしまいます。人を騙してでも金になればいい、金を手にした者が勝ちという考え方は大嫌いで忌むべきものだと思っていますが、一度暗黒面に堕ちても真っ当な方法で再起を図るならいいと思うのですよ。それが素晴らしいものなら私は応援するかもしれない。果たして日本の社会がそれを容認するかどうか。難しいのかな。事実を公表したら自殺するとか言ってたみたいですが、間違っても未来を悲観して自殺などされないよう……。生きてりゃいいこともありますよ。
◆ 結末
これだけ大きなことが、果たして佐村河内氏と奥様、そして新垣氏だけでできたのかなぁ。他に知ってた人がいたんじゃないかなぁ。いないはずないと思うんだけどなぁ。金になるなら何をしてもいいとか考えているクズい音楽プロデューサーとかが黒幕にいたんじゃないかなぁ。とか勘ぐってしまいますが、今後何か出てくるんでしょうかね。
なんというか、誰も得をしない悲しい事件だなぁと。佐村河内氏も新垣氏も関係各所もお客さんも全員損してる。得をした人いないでしょう。嘘や虚像で築いた栄光の結末なんてこんなもんですよという道徳の授業のような一般論に落ち着くでしょうか。
私は、人を騙してお金をもらったり、信念に反することや、これはやったらダメだと思うことには加担しないで生きていく所存です。