さすが大正義だなあとため息をつかずにはいられません。
昨日、8月28日に日本テレビ系列で放送していた巨人×阪神を見ていたのです。序盤に阪神が4失点してこりゃダメだという事で熱心に見ていたわけではなく、結果は筋肉に2安打完封負けを喫するという、見るも無残な試合でした。
まあ横浜軍が名古屋軍を3タテして4位をキープしたため、阪神が負けた事はどうでもよいのですが、中継のところどころで、
「日本人の人生を変えたプロ野球名場面集」
と題して、トップ10を発表していたのですね。
よろしいですか、「日本人の人生を変えた」ですよ。これは相当な言い草なわけです。プロ野球80年の歴史で、星の数ほどの名場面が生み出されてきたわけですが、その膨大な記録と記憶の中からトップ10を発表すると。これは一プロ野球フアンとして期待せざるを得ないわけです。
でまぁ、結論から言いますと、トップ10全てが讀賣のプレイでしたね。
なるほど、日本人=讀賣フアンだと。讀賣フアンならずんば日本人に非ずと。そう言いたいわけですかと独りごちまして、試合終了後にすぐさまトゥイッターに感想を書き残したわけなんですが、冗談じゃないという話ですよ。
「日本人の人生を変えたプロ野球名場面SP」と銘打って紹介している10個が全部讀賣のプレイなんですが、この局どうにかなりませんか。 #npb
— 市原 雄亮 (@dirigent_lyo) 2014, 8月 28
讀賣ファンならずんば日本人に非ずという事ですかね。早く閉局しないかな! #npb
— 市原 雄亮 (@dirigent_lyo) 2014, 8月 28
一夜明けたらニュースサイトなんかで取り上げられていまして、嗚呼やっぱり気になった人多かったんですかねと思うと同時に、こんなどうでもいい事がニュースになる日本は平和ですねと朝から暗澹たる気分になったわけです。
それはともかく、最初からそういう意図の企画なら「巨人フアンの人生を変えた」とか言っとけよと。この放送局は未だに日本人はみんな巨人が好きだとかという幻想を抱き続けてるんでしょうか。巨人大鵬卵焼きの時代から先に進めていないんでしょうか。
20~30年ほど前までは、テレビという一大メディアにおいて野球が映る時間のほとんどを巨人が占拠していたんですから、身近に球団の無い人はみんな巨人フアンでしたよ。かくいう私も新潟にいた頃は巨人フアンでした。なぜなら巨人しか知りませんから。毎日毎日放送してるんだから、すごいチームなんだと。いわゆる大正義巨人軍というやつですね。子供にはそれくらいの発想しか出来ないわけです。大洋なんて「た」の字も知りませんでしたよ。
それが今や通信手段が発達し、ネットや衛星放送でほぼ全球団の試合が生で見られる時代なわけですよ。応援する球団の選択肢は段違いであって、野球=巨人の時代なんてとうの昔に終演を迎えているのですよ。
にも関わらず、この21世紀、2014年にもなって「日本人の人生を変えた」とか言って讀賣のプレーしか紹介しないなどというクソみたいな偏向メディアの実態を目の当たりにするとは思いもしませんでした。怒りというか、まだこんな事やってるのかという驚きと呆れですよこれは。
そもそも「日本人の人生を変えた」などというタイトルが大間違いで、別に日本人全員が野球好きじゃないだろうと。百歩譲って「野球ファンの心に残る」あたりにしておけば、まだマシだったかもしれませんが、日本人の人生を変えたって何だよそれ。日本人=野球ファン、野球ファン=巨人ファン、巨人ファン=日本人という三段論法が成り立ってしまうんですが、正気ですか? 企画したやつ誰だよ。バカなのか? バカだろ。
本事案より、巨人軍と親会社である読売新聞をはじめとする関係企業は、讀賣フアンが喜んでいればそれでいいという考えを持っている事がはっきりと分かるわけで、野球界全体の利益だとか発展というものはまるで考えていないと受け止めてよろしいですかね。多少肩入れするのはやむを得ないとしても、報道機関としてどうなんですかね。アンチ巨人の心にさらに強固な鍵をかけるような出来事であったと思います。巨人フアンはどう思ってるんでしょうか。こいつらは巨人の映像を流しとけば喜ぶだろと見下されている感もありますし、フアンですら呆れてそうな気もしますが果たして。
と書きつつも、巨人はこれくらい他球団から嫌われる存在であってよいとも思うのですね。巨人フアン×他5球団(11球団)フアンという構図こそが日本プロ野球であり、傲慢で憎たらしいくらい強くてムカつく球団を張り倒せという反骨心は、判官贔屓の心象風景そのものであり、勧善懲悪といった水戸黄門にも似た、ある種の美学にも通じるわけです。
昨今幅をきかせている、「みんな頑張れ」的な風潮は私は好きではないんですね。批判してはいけないみたいな。日本代表が負けて「夢をありがとう」とか「勇気をもらった」とか。愛と勇気なんてアンパンマンだけで十分ですよ。別にそう思うなという意味ではなくて、「負けたら意味ねえだろバカヤロー」とか「弱いんだよ下手くそ!」とか、そういう人がいてもいいんじゃないのという。意識の多様性が認められていない空気、なんでもかんでも穏便で大人しい方向に向かおうとする空気は居心地が悪いですねと。
ですので、「どの球団も仲良くしようよ」という人がいてもいいと思いますし、「巨人ふざけんな!」という人がいても問題はなくて、私はどちらかというと後者として横浜フアンをしながら野球を楽しんでいるクチです。だいたいスポーツは代理戦争なんですから、仲良くとか無いですよ。例えドラクエの作戦に「みんな仲良く」があったとしても、クリフトはザラキを唱え続けるべきだと主張したいところです。仲良くどころじゃない、これは殺るか殺られるか、命(タマ)の取り合いなんだと。
注意したいのは、心の底から本気で憎悪してはいけないと。別に選手たちに個人的な恨みつらみがあるわけじゃないですし。そもそも巨人が首位である以上、勝負の世界では結果が全てですから、2位以下のチームのフアンが何を言っても負け犬の遠吠えであり、それを理解した上に様式美が存在するのですよ。球場に応援に行って讀賣に負けた時は心の底から怒りを爆発させますけども。
私はミクロな視点では強烈なアンチ巨人で、負けろとか解散しろとか罵詈雑言を浴びせていますけれども、マクロな視点ではまぁアレですね。言葉にはしませんが。大前提として野球が好きですから。
というわけで、讀賣巨人軍におかれましては、.250前後でソロムランしか打たない中距離砲を引き取ってくださいまして本当にありがとうございました。これからも使い続ける事で他球団をアシストしてくださいますようお願い申し上げます。
いずれにせよ、昨日の企画はバイキングと肩を並べる程度に最低だったと思います。猛烈な反省を促したい所存です。