トヨタの車、アクアのCMにファイナルファンタジーの「プレリュード」が使用されたという事で話題になっているようです。
ネットの反応を見ていますと、ゲーム音楽がゲームという文脈を超えたところで音楽として認められたと、大変誇らしく大きな出来事として捉えられている反応が多く見受けられました。
ゲーム音楽的には非常に明るい話題ですし、大きなニュースだというのが大前提になりますが、私としては少しだけ冷静に考えてもいいのかなという思いもあり、といった具合であります。
ゲーム音楽がゲームという文脈を超え、単純に音楽として認められたという賞賛についてですが、このCMシリーズは、第一弾がPerfume、そして前作が初音ミクの楽曲をピアノアレンジで使用するという、その時点で既にネットにおける話題性が高いものであったわけです。
Perfume、初音ミクを、原曲とは離れたピュアなピアノアレンジで使用するというのは、耳目を引きやすいものであると同時に、これを使えばネットで話題になるだろう的な意図が見え隠れするな、などと感じてしまうのは私の性格が悪いせいだと思うのですが、そこにきてファイナルファンタジーという恣意的な選曲を見ますと、ゲーム音楽という文脈と無関係どころか、それが大きな役割を果たしている気がしてくるわけです。
元々ゲーム音楽は、ゲームという文脈と一切関係なく、ニュース番組やバラエティ番組のBGMとして使用されている実績がありますから、ゲームと無関係に単純にBGMとして使用されるという事自体は、局地的にではありますが昔からある事であり、今になって初めて達成した事ではないのは確かです。それどころか20年ほど前から普通に行われてきていたかと思います。
そのような理由から、ゲームやネット、サブカルチャーといった枠から離れたところで使用されたというにはまだ勇み足ではないですかねというのが私の率直な感想です。
ですから、今回の件については、ゲームの文脈とは切り離された音楽として認められたというよりは、トヨタという世界的企業のCMに使用されたという事を、重大な事実として受け止めるべきであろうと思うわけです。
とはいえ、今回のCMを機に、FFプレリュードがドラクエ序曲並に誰でも聞いたことがある音楽となる可能性、そしてトヨタのCMに使われたという実績から、今後ゲーム音楽が色々なものに積極的に起用されていく可能性はあるわけですから、大きな第一歩となるかもしれませんと言えるのではないかと思います。
植松さんも、曲を書いていた当時は、自分の楽曲がトヨタのCMに使われる事になる未来が待ち構えているなど微塵も考えておられなかったでしょうね。偉大な足跡だと思います。心より、おめでとうございます。