現時点で音楽活動を行うということに関して

 何の影響力も知名度も無いことは重々承知しておりますが、音楽業界の隅の隅、すみっコぐらしたちよりもさらに隅にいる者として、そしてオーケストラを運営する身として、新型コロナウイルス蔓延下の音楽活動において私の至った結論について記しておきます。ちゃんとした指揮者、有名な指揮者からこういう意見が出ているのを見ていないので。
 ここ1週間くらいずっと考え続けていたのですが、直近で練習や本番を開催する予定がある皆様は、どうか一度考え直し、中止の方向に舵を取ることにいたしませんか。
 ここまで頑張って練習してきたのに。会場を確保しているのに。きっと何も起こらない。自分たちに限ってそんなはずがない。大丈夫だ。その気持ちは痛いほど理解できます。私も少し前まではそうでした。
 しかしながら、37.5℃以上の発熱や自覚症状が無ければ問題ない、無観客であれば大丈夫とされていた状況からは一変し、無症状感染者が感染を拡大させているという研究結果が出ております。
 明確に判断できる症状があれば回避も可能ですが、無症状で感染を拡大させるということを回避するのは、我々一市民には到底不可能です。検温やアルコール消毒ではもはや防御になりません。
 団体内や観客に感染者がいないという保証はどこにもないのです。むしろ全員が感染しているものと考え、今とるべき最良の行動は一体何なのかを考えていかないと、終息しないばかりか、拡大が進んでいくだけであると感じています。
 練習や本番で無症状の感染が拡大し、それを自宅に持ち帰った結果、高齢の家族が感染し、死に至る。そのようなことが現実に起こり得る状態となってしまっているのです。高齢者のみならず、若い世代の死亡例も報告され始めています。
 重症化した後はあっという間だと言われています。気づいた時には手遅れです。後悔しても遅いのです。そんな悲劇が誰のもとにも起こり得るという認識の元、多人数が集まって練習や本番を行っても問題ないのか、今一度、よく考えてみませんか。
 音楽は大切です。文化は命です。人間にとって欠かせないものだと確信しています。それ故に私たちは人生の貴重な時間をそれに費やしています。だからこそ、また必要とされる時が必ず来ます。
 少し踏みとどまって、練習や本番を中止とするリスクと、感染者を拡大させてしまうリスクを天秤にかけてみてください。考えすぎでは? やりすぎでは? 命に関わることなのでそれくらいで丁度いいはずなのです。
 もはや気をつければ大丈夫という状況ではないという意識を大勢が持ち、今この時を耐えることで感染拡大を防止し、音楽業界も新型コロナウイルスの撲滅に一役買いませんか。
 今は中止という決断をする勇気を持つべき時であると私は考えます。何もかもが手遅れになる前に。
 練習や本番を行うのも中止するのも、それぞれの大変な深慮のうえだと思っています。ですから、結論は尊重されるべきですし、批判するものではありません。もちろん、私に強制力など全くありませんし、だいたい誰なんだお前はという話でしょう。ただ、音楽業界から感染爆発が起こった、取り返しのつかない悲劇が生まれたなどということになってほしくないと強く願っています。
 事態を冷静に、合理的に考え、最良の判断を個人個人が下すことで、最悪の状況を回避する力の一つになれると信じております。
 決行にしても中止にしても、今一度じっくりと話し合って考えてみませんか。
 読み直して、うーん、ものすごく余計なお世話だなと思いつつ。