横浜×ヤクルト 第21回戦 桑原外野手に見たもの


 負けた負けた、また負けた。というか、今年は私が見に行った試合は一つも勝っておりません。いや、テレビで見た試合も全部負けているような気すらいたします。

 今日の試合は勝てた試合だったはず。現地にいて肌で感じたのですが、負けに至ったターニングポイントは先発石田投手の交代だったと、そう思います。

 石田投手は100球前後が鬼門であり、6,7回に捕まる可能性が高い。それは統計的に確かなことでしょう。しかし、しかしです。この日の石田投手は、ピンチが訪れても粘投で闘志を燃やすナイスピッチング。最大のピンチでは山田内野手をゲッツーに切って取る最高に痺れるピッチングを見せていました。今日こそは7回の壁を越えられるかも。と思った矢先の代打。そんなバカな。勝ちを穫りに行かないのか。

 野球に限らず、「勝負の流れ」という概念が存在します。そんなものはオカルトだ。運や勘に頼るべきではない。私もそう思うことがままあります。でも確かに存在するのです。それが今日の石田投手の交代時期でした。あれで完全に流れを失い、その後は出てくる投手が滅多打ち。あえなく敗戦となったのであります。現地にいたファンは石田投手の交代までは勝利を確信していたのではないでしょうか。それくらい、「流れ」が横浜軍にあった。

 しかしながら、一つ大きな大きな出来事を見たのも事実。9回裏の桑原外野手の打席。これは大きな意義があったのではないでしょうか。

 永遠に続くのかとすら感じた、実に13球を粘るバッティング。最後は凡退となりましたが、勝利への執念をそこに見て、確信をしました。横浜軍は今や負けが染み込んだ、牙を抜かれたどうしようもない腑抜けチームではない。勝つために戦う集団になってきているのだと。

 そして桑原外野手にある選手が重なって見えたのです。小柄ながらガッツ溢れるプレーをする中堅手……。そう、98年組にいた波留敏夫外野手です。桑原外野手と波留外野手が重なったとき、色々なものが見えてきました。

 今、このチームは革命が起こっている。5年以内に優勝出来るポテンシャルを秘めている。

 考えてみると、長い暗黒時代を過ごしてきた横浜軍にはとにかく先発投手がいなかった。しかし、今は中軸を担える投手の柱が揃いつつある。まだまだ全面的な信頼をとは思わないが、あと少しで大きく化ける力を持った投手がズラッと並んでいる。

 先発の柱だけでも井納、山口、石田、今永と役者が揃う。そしてベテラン久保、若い砂田といったローテーションの谷間を担える投手もいる。

 さらに中継ぎは須田(今一番好きな選手だ)、田中、三上、加賀と、安定感があると言ってよいであろう選手が揃っている。

 そして優勝を狙うのに何よりも必要となる抑えだが、これはなんとしても山崎に復活してもらわなければならない。いや、復活ではない。成長が必要なのだ。そもそも私は今年の山崎は抑えとして信頼していなかった。多くのファンはヤスアキヤスアキと浮かれ気分だったようだが、全く共感していなかった。それが顕著に出始めたのがオールスター明け。いよいよその時が来たかと見ていた。こうなることは必然だった。これを乗り越え、真の抑え、佐々木主浩に並ぶ投手にならなければ優勝は見えてこないだろう。現に、今年の山崎が確実に試合を締めくくっていたのなら、今頃讀賣を抜いて2位になっていた可能性もある。負けてはいけない。それが抑えだ。そんな厳しいポジションだからこそ、山崎の性格ならきっとやってのけると思っている。今年の経験を糧に、来年はさらに成長した姿を見せていただきたい。

 打者も脂が乗っている。私が入団当初から将来の日本の4番だと憚ることなく宣言してきた筒香がいよいよその本領を発揮し始めた。まだ潜在能力を残しているように見える梶谷がもう一皮剥ければ最高のクリーンナップを築けるはずだ。機動力があるので、梶谷は1番、2番という起用になるかもしれないが、私としてはやはり3番を打ってほしい。そして前述の桑原はもちろん、2年目の倉本も不動のレギュラーとなれる可能性は高い。宮崎もまだまだ延びしろを残しており、大きく期待できる。

 私としては、外野陣は松本啓二朗、荒波、梶谷という青写真を描いていたのだが、それはどうやらもう無理なようだ。1番荒波、2番松本、3番梶谷、4番筒香というラインアップは完成すれば強烈だと思ったのだが。残念でならない。

 課題は二塁と三塁だろう。今の石川は打撃に全く期待が出来ない。調子が悪いにせよ2割打つのがやっとでは一軍にいてよいレヴェルとは言えない。だがしかし、石川以上の二塁手がいないのもまた事実。ここが最大のウィークポイントとなるだろう。

 三塁は白崎がその持てるポテンシャルを解放できれば彼のものだろうが、それにはまだ数年かかりそうだ。死にもの狂いでプレーしなければ徐々に首筋が寒くなってくる。白崎は正三塁手になれる素材だと信じているので、いくらランナー無しでしか打たなくとも、どうにかして伸ばしていただきたい。白崎が成長すれば、二塁宮崎、三塁白崎で固定ができる。二塁手は石川が復調するならそれもよし。とにかく2割前後の打者が試合に出なければいけないようでは優勝は狙えない。

 長年の暗黒時代のもう一つの大きな要因として、正捕手の不在が挙げられる。谷繁以降、誰一人として正捕手の座を掴んだ者はおらず、出てきては消え、出てきては消えを繰り返してきた。それが戸柱の登場により、ようやく解消されようとしている。まだ全試合固定までの安定感はないが、これでルーキーなのだから堂々たるものだと言えるだろう。

 このようなことを考えると、現状の戦力がピークを迎える、ないしピークを過ぎるまでのこの先5年が勝負だと睨む。ここを逃したらしばらくチャンスはないように思う。ただ、選手層が薄いのも事実。主力が抜ければあっという間に戦力が激減する。誰も怪我をしない前提でペナントを戦うのは無理というものだろう。ベテラン不在のしわ寄せであると思っている。

 横浜に20年ぶりに好機が訪れている。その手応えはフィールドの外からも十分に感じる。ここで強くなることの努力を怠らなければ、きっと頂点を目指せる。20年に一度くらい、そんな夢を見てもいいかな。そう思わせるものがあった桑原外野手の最終打席だった。