ゲーム音楽コンサートで夜逃げが発生したという噂が流れてきました


 某原稿の締切を目前に控え、ヒーヒー言っているところに大きめの炎上案件が発生したという報を受けたので見に行ってみました。知らなきゃ見に行かなかったのに……。諸氏におかれましては、余計な通報はお控えくださいますよう、お願い申し上げます。

 集めて分かりました、ことの次第は以下のようです。

・企画オーケストラである「トワイライト・オーケストラ(通称・夕オケ)」という団体が立ち上げられた
・家庭用ゲーム「キングダムハーツ」、「キングダムハーツII」の曲を演奏するという名目で参加者募集、および集客告知を行っていた
・あるタイミングで突如方針を変更し、曲目非公開の「下村陽子メドレー」という表記だけになった
・会場にてパンフレットの配布無し
・コンサートが始まってみればやはり「キングダムハーツ」シリーズの曲のコンサートであった
・司会が曲目に触れないという不自然な進行が見られた
・終演後、公式ウェブサイトやTwitterなどが全て削除された

 ふむふむ、分からん。

 これが何故問題になっているかというと、少し前にオルガン団体のコンサートで「キングダムハーツ」を取り上げようとした際、権利元であるディズニーからの圧力(だと私は思っています)によって、直前で開始を回避しなければならなくなった事案がありまして、その団体は食い下がるも納得のいく回答は得られず、最終的には話しに応じてもらうことすらできず、言われたとおり泣く泣くコンサートを中止とし、30万円ほどの損害が出たそうなのですね。詳細はこちらをご参照ください。

THE MUSIC MAGES 外伝2
~ お客様へ:重要なお知らせ ~
http://www.music-mages.com/concert.php

 要するに、ディズニー社は、「キングダムハーツ」のコンサートを行う場合、該当タイトルの曲数を全体の半分以上にしてはならず、半分以下でないと許諾を出さないということだそうです。この辺りについては、「キングダムハーツ」シリーズの楽曲はJASRACに委託されていることや、実際の当事者を取材済みなので書きたいことが満載なのですが、時間と余裕が無いので全く手がつけられておりません。今回も割愛し、いずれ改めて触れたいと思っております。

 今回も例外ではなく、当然そのような措置が取られたのでしょう。それを受けて、該当オーケストラはヤり逃げスタイルとすることに決定したようです。「どんな判断だ」という名言をお送りしたいところです。

 全て非公開で証拠を残さず演奏だけして消える。うーん、この確信犯。熱いぜ。

 私は以前から申しておりますように、著作権というのものは著作物を使わせないためではなく、使ってもらうための権利であるという理解をしております。著作者の「名誉」と「財産」を守るためのものであり、今回のケースはどちらも多大な侵害をしているとは言いがたいものと思われます。あくまで私の考え方ですよ。

 まず名誉の方では、自らが著作者であるかのように喧伝することを阻止するためでありましょう。要は悪質なパクりを防ぐためです。ゲーム音楽においては、よく「クオリティの低い無許諾演奏をすることで作品の価値を下げる」などというもっともらしい理由が語られることがありますが、今の時代、アマチュアの演奏が正規のものだと思う人がどれだけいるしょうか。聴衆がそんなに愚かだとでも思っているのかと言いたいところです。もちろん、嘘を吐いて正規演奏だと言えば問題なわけですが。

 また、財産の方にいたしましても、アマチュアの、それも無料のコンサートでありますから、著作権法上は例外規定に該当するもので、著作物を自由に使えるケースのはずなのですよね。情報ではプロ奏者も多数参加されていたそうですし、指揮者も全くのアマチュアというわけではなかったようですので、謝礼が発生しているのでは、などの可能性は考えられますが、何も知らぬ外部がとやかく言うのは邪推というものです。

 余談ですが、私としては、そこからさらに一歩踏み込み、相手方に著しく経済的損失を与えるような商業的に大規模なものや、明らかに悪質な意図をもったものでない限り、取り締まるのは正しい方向ではなく、むしろ積極的に門戸を開き、どんどん使用機会を増やす方向にすべきだと思っております。

 そもそも二次創作のお祭りであるコミケがあれだけの隆盛を誇っておきながら、なぜ、ことゲーム音楽については趣味のレヴェルであっても異常に厳しい対応がなされるのか、ずっと疑問ではあるのです。二次創作で家を建てるような人がいるのにですよ。そこは多くの人たちで考えるべきだと思うのですが、未だ議論はなされていないように思います(私が知らないだけかもしれませんが)。例えば、前述のTMM事件の時にしても「おいディズニー、音楽もっと自由に使わせんかいコラァ!」という世論になるのかなと思ったら全くそのようなこともなく、皆さん大人しくされているようです。世論が動かなきゃ変わらないですよね。

 まぁ、この辺の話はまさにグレーゾーンで、触らぬ神に祟りなしという世界なのです。そもそも著作権はとてもグレーな世界で、未知の領域が多いのです。どうしても白黒つけたい方はあまり見ない方がよいと思います。その分、権利者と利用者が持ちつ持たれつというか、特に絵の分野ではそういった文化が醸成され、明文化されない暗黙の了解のもとに成り立っているのだと思いますが、その辺りは詳しい方にお任せいたします。

 翻って、音楽、とくにゲーム音楽演奏においては、どうも人様の家の中に首を突っ込んで著作権著作権と騒ぎ立てる憲兵隊のような方がいるようでして、それも対象とされるのはほとんど吹奏楽と管弦楽のように思われます。

 そういう方々は、全てのコンサートやライブ、動画サイトにアップされている違法動画をチェックして逐一通報してクリーンな世の中を作ってみなさいよと思うのですが、なぜか吹奏楽と管弦楽ばかりが攻撃(といえば語弊はありますが)対象となっているようで、前向きな感情ではなく、怨嗟や恨み、妨害などといった後ろ向きな感情から来ているように思えてなりません。ゲーム音楽を演奏する人たちという狭い世界の中で、お互いに足を引っ張り合っているように見えて不思議です。

 だいたい、聴く側が著作権など気にしている時点で、どうかしているのではないですかね。普通、コンサートやら観劇やらに行くにあたって、著作権をクリアしているのかななんて気にしますかね? それを気にする人が多いような状態はどこか健全でなく、何かしらの意図が働いているように思えます。著作権は権利者と利用者の間の問題であって、第三者が口を挟む部分ではないのです。お客さんはもとより、部外者など無関係もいいところですね。

 さて、私はというと、今回ディズニーの勧告を無視してコンサートを実行した(らしい)という部分については特に思うところはありません。前述の通り、それは当事者同士で話をつけるところで、観客、および外部の人間は無関係であり、実際何があったのか知る由もありませんし、実際に演奏を聴いた方が覚えた感動に変化があるものでもないでしょう。

 なぜこのような意見なのかというと、コンサートについて騙されたり悲しい思いをした人がいないというところが大きいと思っております。誰かを騙したり、嘘をついて金品を受け取りながら、予定と違うおかしなものを提供したのなら糾弾されるのもやむなしかとは思いますが、現時点ではそのような要素が見当たりません。

 我らが大澤親分はその辺りが分かりながらもジレンマを抱えておられるようで、心境をこのように吐露されております。

 ほぼ同意ですが、うっとおしいという感情は特に私にはないです。嫌悪だったり、うっとおしいと思っても物事は良い方向には進みません。自分と関係がない話なら、気にしないか受け入れるか、どちらかがよいように思います。また、こういう事案が発生すると、明文化されたルールが制定されたりするわけで、それもまた一つの転記として必要だったなという時がいつか来るのかもしれません。

 その他、トゥイッターを見ていると、「自分たちはきちんとやっているのに」とか「全体が疑われてしまう」という意見も見られますが、少なからず嫉妬から来ているものもあるだろうなと感じる部分があります。自分たちは我慢しているのに、と。無論、全部とは言いませんし、私も思うことが無いでもありませんので、分かります。しかしながら、自分は自分、他人は他人です。思うのは自由ですが、それを声高に叫んで、他人と自分を比較して批難するのはちょっと違うかなと感じます。そういう持論を持たれている方は「音楽家がアホなことをすると音楽家全体がおかしく見られるからやめてほしい」みたいなことを言う方のような気がしてなりません。

 また、ディズニーとスクエニの関係がおかしくなってゲームの続編が出なくなるのでは、という見解については、ミルコ・クロコップに「おまえは何を言っているんだ」と真顔で言われてしまうようなお話のように感じました。スクエニ関係者が裏で糸を引いていたというような話であったならば、一万歩くらい譲ってそれもあり得るかとは思いますが、スクエニが決して制御することができない第三者が行ったことであり、法的には問題ないと思われる無料のコンサートです。そこまでのコントロールを求めるようなことが契約条項に盛り込まれていれば、弁護士が黙ってはいないでしょう。今回の件で企業間の不信感が生まれるという発想は新鮮で、「なるほど、そういうのもあるのか」と逆に驚かれました。もしそれでディズニーがスクエニが提携を解消するのであれば、逆にスクエニがディズニーを訴えられるくらいの話ではないでしょうか。いい例えがあまり思い浮かびませんが、ユーザーによってゲームソフトを違法にネットに流されたからといって、ハードメーカーとサードパーティの仲が険悪になることなんてありますかね。それは違法ユーザーに責を問うべきことだと思われます。

 何も考えずに色々と書きましたので話があちらこちらに飛んで申し訳ありません。私からはただ一つ、今回の件はケツの拭き方が考えうる中で最低最悪にダサく、劣悪なやり方にしか見えなかったということだけは申し上げておきたいと思います。

 事実関係は分かりかねますが、許諾をもらえないなら証拠隠滅して逃げればいいと確信犯でニヤニヤしながらやってるように感じられる点について拒否感を覚えました。私の持論としては、例え世間一般では悪いとされる行為だと分かっていても、やるからには悪びれるなというものがあるので、こういうやり方は本当に嫌です。やるならやるで堂々とやろうよと。逃げるというのは悪いことをしている自覚があるからにほかなりません。悪いことをしていると分かっていながら誰もストップをかけなかったのか、演奏さえ出来ればそれでいいのか、という点については非常に疑問があります。オーケストラという大人数が関わる組織において全員がそう思っていたのであれば、それはもう洗脳に近い新興宗教と言われかねません。逆に、もし罪悪感を感じながらやった方がいるのであれば、それは正しい選択ではなかったと申し上げたいところです。

 色々と天秤にかけた結果、開催することに決めたのであれば、「こういう経緯がありまして、こういう意図で開催しました。私たちはやり切りました! 裸だったら何が悪い!」くらい言ってくれれば私は「元気があってよろしい!」と手を叩いて喜んだと思いますが、本当に最悪のやり方で終わってしまった感じがあります。運営がどなただかは存じませんが、こういうことをやる方はもうどこに言っても信用されないのではないでしょうか。少なくとも私は一緒に活動をしたいとは思えません。

 また、指揮者は名前を検索すれば分かってしまいますが、音大出で個人レッスンなどをやっているプロの楽器奏者の方が担当されたようです。その他にもプロ奏者が多数乗っていたという情報を見かけましたが、もし私が指揮を依頼されていたら、逃げるという方針になった時点で降ります。何があっても逃げ隠れせず運営が全責任を負うということならそのまま受けるかもしれませんが、逃げるという時点で無理です。

 こういうことを書くとまた無用な敵を増やすなどと言われそうな気がしますが、プロとしての自覚はあるのかという話になるでしょう。著作権法違反云々が問題ではありません。自分たちが作り上げた音楽についての責任を放棄して逃げる人間がプロを名乗っていいのか、ということです。もしかしたら深い深い理由があったのかもしれませんが、全てを消し去って逃亡した今、こうした見方をされ、疑念を抱かれるのはやむなしというところでしょう。もしくは、何も知らされていなかったのであればご愁傷様という感じです。

 これを書いている今、ウェブサイト、およびトゥイッターアカウントが復活しているように見えますが、内容を見る限り、少なくともトゥイッターアカウントについては、公式が消したことでフリーになったアカウント名を使って第三者が新しく作ったものと見て間違いないでしょう。

 人間のやることですし、稀にこういった野心的なやらかしや豪快なバカ事件もありじゃないかと思うのですが、それだけに着地のさせ方が本当に残念極まりありません。最悪という言葉以外に思いつかず、「夕オケ」ならぬ「夜逃げオケ」という名称をお送りしたい気持ちでいっぱいです。いや、そうじゃないんだ! というタレ込みなどございましたら、お待ちしております。

 こちらからは以上です。