上野でオーケストラの指揮をさせてもらったんだ


 私がプロニートである事は有名ですが、単にニートであるだけでなく、一度でいいからオーケストラの指揮をしてみたいという願望を持って生きている事もまた有名だと思われます。

 例えオーケストラに60人必要だったとしても100人必要だったとしても指揮者は1人ですから、指揮者になるという事はハードルが高く、夢は夢のままで終わるのだろうなどと思っておりました。そんな私に絶好のチャンスが巡ってきたのであります。

指揮者はあなた! Conduct Us in 上野公園
http://www.tokyo-harusai.com/news/news_2605.html

 このイベント、トゥイッターだかで流れてきて知りまして、参加するぞなどとつい早まったトゥイートをしてしまったのですが、行ったとしても参加できる保証が無い事に後で気づきました。はてどうしよう、でも行くと言ってしまったしと迷っていたのですが、ちょうど同じくらいの時間帯に近隣で用事がありまして、少しだけ早く家を出れば行けるなという事で、とりあえず行くだけ行ってみようと出撃いたしました。大切なのは有言実行です。

 実際に行って係員に話を聞いてみますと、イベントが始まった後に列に並べば誰でも参加可能だというではないですか。これは僥倖。夢にまた一歩近づいた瞬間です。

 開始時間を待ちますと、奏者が現れチューニングを行いました。お手本という事で1名登場し「歌劇《フィガロの結婚》序曲」を指揮します。前日に見たネットの記事では、イケメン指揮者がお手本を披露などとふざけた事が書いてあったので期待していたのですが、終止イチニーイチニーと手を上下に振っておられました。その実態は、指揮者ではなく実行委員の方だったそうです。記事を書いた記者は反省が必要でしょう。

 お手本が終わり、一般の部が始まるわけですが、まず一人目はお手本を見せた方が決めるというアナウンスがありました。選ばれた成人男性がトップバッターという事で指揮をしたのですが、あれは明らかにサクラでしょう。しかしながら、尻込みして参加者がいないかもしれない、また実際に指揮するのは短縮版であるという事の説明という意味で必要です。なかなか考えられた構成であります。

 そんなこんなでいよいよ次が私の出番というところで、係員が指揮棒を渡してくださり、指揮について教えてくださいました。

「こういう風に持って、振ってくださいね。緩急をつけると面白いですよ」

「あ、なるほど。はい。緩急ですね。分かりました。ありがとうございます」

 満面の笑顔を交わす係員の女性と市原氏。本当に親切なイベントです。しかしフィガロの結婚に緩急などないのだ。なぜか直感でそう思いました。そしていよいよ私の番が訪れたのです。

 指揮棒を手に指揮台に立つと「よろしくお願いします」と笑顔でオケの皆さんに一礼。もうこの辺りは職業病でしょう。やるなと言われても勝手にやってしまうと思われます。いや、職業病っていうかニートなのですが。

 すると美しいドレスをまとったコンサートミストレスの麗しきお姉さまが「後半~」とオケに伝えておられました。そうなんです、演奏直前に冒頭から1分間くらいと、結尾の1分間くらいが選択されまして、指揮者はどちらにするか選べません。割と注意深い私は前の順番の方を見てどこからなのか把握しておりましたので、「あっ、後半ですね。はい」と口をついて出ると、一瞬「えっ?」という顔で見られたような気がします。自意識過剰ですね。

 渡された棒は普段使っているものと比べてかなり重量があり、支点がまるで異なっておりました。また、持ち手はコルクではなく木製で細いものでしたので、環境の違いに少々戸惑いながら振り始めました。現在の振り方は今使っている棒に最適化されております。それゆえに棒が手の動きをそのまま再現してくれず、棒が遅れて着いてくるような感覚で軌跡がヨレヨレとしてしまい、これはいけないと感じました。この辺りは撮影した動画を見れば一目瞭然です。

 弘法筆を選ばずとは申しますが、達人の域にいかないと難しいものであると思いました。このような事態にも振る前に気づいたり、一瞬で修正できるようにならねばなりませんね。とても勉強になりました。

 自分の番が終わってからもしばらく見ていたのですが、隣で見ていたお年を召された女性から「今日はあなたの指揮がピカイチだったわ。あなたよっぽどクラシックがお好きなのね」と満面の笑顔で言ってくださり、お世辞でもとても嬉しかったです。指揮を通じてクラシックが好きだという気持ちが伝わった事が特に嬉しいです。

 他にも感じた事や起こった出来事は短時間でたくさんあったのですが、もう文字数も多くなってしまいましたので、レポートはこの辺で終わりにしたいと思います。ご興味があれば飲みにいった時にでも直接聞いてください。夢を一つ叶える事ができたので、参加して本当によかったです。

 後半は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」に曲を変え、たくさんの方が楽しまれていました。小さなお子様からお年を召された方まで、老若男女が参加し、観客も盛り上がり、とても楽しいイベントでした。オーケストラやクラシックを身近なものとして触れ合えるという事で非常によいイベントだと思います。ですが、まかり間違って、指揮者を目指そうなどという夢を持ってしまう子供がいないとは言い切れず、なかなか罪深いものがあるかもしれない、などと余計な心配をしてしまうのでありました。

 ちなみに、明日発行予定のメルマガ第3号において、購読者限定で動画を公開します。さすがに公にはしたくないので。
http://blog.185usk.com/mailmagazine/

 あと印象的だったのは、オケの皆さんも、子供が一生懸命振ったり、大人が頑張ったりしているのを見て、一様に笑顔であった事です。ああいったイベントを心から楽しめるというのは素晴らしいものと思いますし、そういう笑顔が多くの方に伝わっていけば、クラシックはお堅いですとか、退屈という見方に一石を投じられるのではないかと思いました。

 来年もがんばります。