文化的発展のためにアマチュアのコンサートを有料化すべきなのでしょうか


 アマチュアのコンサートでも入場料を徴収すべきであるというような、あるべき論が一部で存在すると小耳に挟んだのですが、私はどちらでもいいし、好きにすればいいのではという程度にしか思わないので、議論になること自体が不思議でなりません。

 有料にした場合、団員による運営費の負担軽減や、コンサートをお手伝いくださった方への謝礼の捻出、著作権が生きている曲を演奏する場合には権利者への利益の分配などといったメリットは確かに挙げられるとは思いますし、コンサートは多くの方が多大な労力を費やして開催されるものですから、多少の補助をお客様から頂いてもバチは当たらないとは思います。ただ、デメリットが考慮されておらず、単純に、だからお金を取った方が良い、取る方向へ進むべきだとするのはどうなのよと。

 アマチュアのコンサートというのは、同じ趣味嗜好を持った人たちが集まり、自分たちの練習の成果や、見てほしいものを周囲に対して発表する場であって、そこには初心者から熟練者まで、様々なレベルにいる人々、様々な価値観と考え方を持っている人々が混在しているのが一般的なわけです。

 自分の演奏はお金を取るに値すると思う人もいれば、趣味で楽しくやっている事なのに人様からお金をいただくなんてとんでもないですとか、申し訳ないと考える人もいて然るべきで、これまで私が見聞きしてきた考えは、後者が多いように感じます。また、有料でも無料でもやる事は同じという方もいらっしゃいますね。

 趣味で自分の時間とお金を費やし、無料でコンサートを開催して、どうぞ見てくださいであっても、演奏レベルに対して厳しい事を仰るお客様はいらっしゃいます。そこで、運営費が文化的発展がという大義名分があったとしても、お金をいただくとなりますと、支払った対価と演奏の満足度を比較される傾向が強くなるのは明らかでしょう。

 このレベルでこの値段ならもう行かない。お金を取るレベルではない。

 こういった事を言われる事は現実に往々としてあります。もちろん、謙虚に受け止めるべきご意見ではあり、次に繋げていくべきではありますが、果たしてこのような評価を全ての人が冷静に受け止められるのか。好きだから趣味で楽しくやっているのに、なぜ文句を言われなければならないのかと。お金を取って演奏を聴いていただくという行為は、その時点で厳しい評価に晒される対象になるという事を頭の片隅に入れておく必要があると思われます。

 逆に、お金を頂くに見合った演奏をするぞと、より気合が入る方がいらっしゃるケースもありますので、一概にマイナスだとも思いません。

 次に、大きな問題として、確実に集客に直結するという事が挙げられましょう。

 例えば無料で500人のお客様を集められる団体があったとします。もしそれを有料コンサートにした場合、お客様は激減するのはまず間違いありません。「本当の有料公演」をすべきだと言うのであれば、半減以上は覚悟すべきではないかと。「本当の有料公演」については後述します。

 何かしらの付加価値があり、供給より需要の方が大きいような団体は別です。多少の入場料を取ったところで問題なく客席は埋められる公算が大きいです。アマチュア団体が有料化へシフトしていく理由の一つには、無料では人が来すぎて、ホールのキャパシティをオーバーしてしまうようになったという事が挙げられると思われます。いわゆる整理券代わりですね。最近では整理券を無料で発行している団体もあるようですし、それもまた一つの良い手だと思います。

 その他、無料で開放しますと、いわゆる路上生活者が演奏目的ではなく休憩代わりに入場するため、それを防止するために入場料を100円とするなど、例え名目上だけであっても無料では入れないようにするというケースを見た事もあります。

 いずれのケースにいたしましても、はなから収益性には期待しておらず、自分たちの都合ではなく、お客様の事を第一に考えた対応と言えるでしょう。しかし、無料の段階で溢れて困るほどのお客様を抱える団体がどれだけあるのでしょうかと言われると、無料ですら集客に苦労している団体が多いのですから、相当微妙だと言わざるを得ないでしょう。

 コンサートというものはお客様があって成立するものです。アマチュアにとって大切なのは、お金を回していく事よりも、一人でも多くの人に来て見て聴いて楽しんでいただく事であると考えます。したがって、有料化で客足が遠のくのであれば賢明な判断だとはまるで思えませんね。

 一方、市民楽団において有料でも客席が埋まっているケースがあります。ですが、これには管弦楽団や吹奏楽団が持つ構造的なカラクリがあるのですね。「本当の有料公演」と前述したのはこの部分になります。

 基本的に、アマチュア楽団のお客様のうちの多くを占めるのは、出演者の親族、友人、ご近所さん、職場の方といった、出演者の周囲にいる人たちでしょう。余程魅力的な演目や出演者でなければ、全く縁もゆかりもない人がふらっと聞きに来る割合は低いと考えておいた方がよいです。

 大抵の楽団では、月々の団費とは別に、コンサートが近くなると、ホール代などを賄うため「本番参加費」などの名目で、別途特別徴収があるのが一般的かと思います。その際、コンサートが有料の団体の場合、団員にチケットが配布される事になるわけです。なるべく単純化するために、本番参加費が10,000円、チケットが1,000円としましょう。

 本番参加費10,000円を支払った代わりに1,000円のチケットを10枚渡すので、チケットを配ってお客さんを集めてください。

 これが一般的な方式かと思われます。しかしながら、このチケットを額面通り売る人はほぼおらず、無料で周囲に配布する事になるわけです。支払った10,000円をチケットで回収するのではなく、本番に参加するための出費として認識する事になります。貰った側は、せっかく1,000円のチケットを無料でもらったのだし足を運ぶかという事で本番に顔を出してくれる事になります。以上の構造により、団員が50名いたとして、もし一人10枚全て配布できれば500名の動員は確保できる事になります。

 ただ、現実として、無料であっても10人呼ぶというのはなかなか骨の折れる事でして、ましてや、私のような友人のいない非リアなニートにとっては大変な苦行なわけです。そこで無料ではなく金銭と引き換えとなれば、その難易度は何倍にも跳ね上がる事になります。親戚縁者友人知人同僚を呼ぶにあたっては、「今度コンサートをやるから、よかったら見に来てね」ですから、「お金を払って見に来てね」はアマチュアにとってハードルが高すぎるのです。つまり、チケットは有料になっているものの、無料の演奏会と変わらない、というのが実情です。

 この辺りの構造を理解せずに有料化が正しい道だと説くのは机上の空論であるわけで、アマチュアのコンサートにお金を払って来ていただく事、アマチュアのコンサートをお金を払って聴きに行くという事、という提供側、受け手側、双方における根本的な意識の議論から始めなければ難しいのではないかと思いますし、穿った見方をすれば、それってアマチュアの考えや意識を蔑ろにした一方的な業界向けのポジショントークなんじゃないんですかねと首を捻りたくなったりする次第です。

 そもそも、文化なんて誰かが「こうあるべきだ」と押し付けて形成されるものではないと思うわけですね。自然発生的に出現し、淘汰を経て最終的に人々の生活の中に定着したものが文化だと思いますが。やりたい人が勝手にやるのは自由ですが、全員が文化を意識した活動をしろと言われなければいけない理由はありません。

 少し話が逸れますが、例え入場料が無料であったとしても、お客様はホールに行くまでの交通費や、1回のコンサートを見るために数時間を割いてくれているという事を決して忘れてはいけないかと思います。コンサートを開催する以上はお客様の満足を最優先に考えるべきであり、タダなんだから何でもいいだろは許されませんよねと。ただ演奏したいだけなら非公開か内輪だけで発表会でもやっていればよろしかろうと思います。

 長々と書いておいてなんではありますが、私の結論としては、有料にする事について嫌悪感もなければ、無料である事に問題があるとも思わず、各団体内で議論し、最適だと思われる道を選択すればいいんじゃないですかという、当たり障りのない結論にしかなりません。それもまた団体のカラーであり、在り方に繋がっていく事だと思いますので。それに口出しするのは大きなお世話であって外野は黙ってろという話です。

 趣味なんですから、他人がゴタゴタ言うのなんて気にせず好きにすればいいんですよ。

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