著作権の話は何かと面倒ですね

 私は現在、著作権というものに対して慎重にならざるを得ない立場でもありますので(立場が違えば慎重にならなくて良いという意味ではなく)、普段から気を遣ってはいるのですが、それでも日常生活において、無意識に著作権法違反に該当する行動をとっている事はあるのではないかと思うのです。

 前提として、この先の話は、絵画のパクりですとか音楽のパクりといったものではなく、主にデジタルの著作権法違反、公衆送信権の中の自動公衆送信の話になります。

 著作権法違反に該当する行為はたくさんありますが、ネットユーザーにとって一番身近なのは、なんといっても画像や動画のアップロードであります。実は、著作権が存在する画像を、ネットを通じて閲覧できる状態にすれば、それだけで著作権法違反になります。特にゲーム画面なんかはメーカーからかなり厳しく制限されるのですが、多くの人たちがスクリーンショットをアップロードしていらっしゃいます。

 音楽であれば、営利目的ではないコンサートで、諸条件を満たせば演奏許諾が不要になりますが、その様子を動画サイトで公開する場合は、著作権管理団体へ管理を委託されている楽曲を、それら団体と包括契約を結んでいる動画サイトへアップする場合を除き、権利者に無断でアップロードするのは違法になります。これは案外軽んじられていて、比較的多く目にする気がします。違法である事を覚悟の上でアップされているのか、知らずにやってしまっているのかは気になりますが、いずれにせよ違法行為に該当してしまいます。

 利益目的なわけでもなく、個人や仲間内で楽しむところにまで目くじら立ててもとは思いますが、それでも法律は法律なわけで、犯罪行為に該当してしまう事は避けられません。法律ですからね。しかし、一度たりとも画像の一つもアップした事がない、著作権法違反DTみたいな人間って今の世の中いるんでしょうかねとも思います。

 白黒つけ難いのは、著作権法違反が親告罪であるという事が一因ではないかと考える事もあります。親告罪、つまり、被害者が直接訴えなければ、早朝に警察が自宅のインターホンを鳴らしにきたり、お前ちょっと署まで来いと言われる事はないという事ですね。では訴えられなければ罪を犯した事にはならないのかというと、この辺りは学説が分かれるようですが、主旨と外れるうえ勉強不足なので割愛します。

卑近な例えをしてみると、警官がいないところでの信号無視に近いでしょうか。信号無視は信号機の表示に従わなければ道路交通法第7条の違反となり、罰則が課せられる事になります。これにより刑が確定すれば立派な犯罪者ですが、実際のところ交通のまばらな場所でいくら信号無視をしても、ほぼ捕まる事はないでしょうし、あいつは信号無視をしたと訴え出る人もいないでしょう。

 しかし、信号無視は被害者がいませんので、もう少し著作権法違反に近いと思われる例を挙げるとすると、スーパーでの万引きが該当するでしょうか。別にスーパーじゃなくてもいいですけど。

 万引き、すなわち刑法第235条の窃盗罪。他人のものを盗んだり勝手に使ったりする犯罪ですね。

 万引きは、もちろん見つからなければ逮捕もされませんし、それどころか財物を自分の物にできてしまうわけです。著作権法違反も、著作権者の権利を侵害して使用しながらも、見つからなければ見逃されるという意味では似ているという事にしましょう。で、今日も万引きしてきたぜと触れ回るような人や、無意識に万引きを繰り返している人と付き合いたいかというと、私は絶対に願い下げですし、強烈な嫌悪感を抱く方がほとんどなのではないでしょうか。

 著作権法違反と窃盗罪。両者には、親告罪、非親告罪の違いもあります。著作権法は、著作権者本人、もしくは管理を委託されている者が直接訴えなければなりませんが、窃盗は非親告罪ですから、見つけ次第誰でも現行犯逮捕が出来るものです。証拠さえあれば目撃者のタレこみによって後日捕まる可能性もありますから、それが抑止力として働いている側面もありましょう。

 他人の権利を侵害する、無断で他人の物を奪うという意味では著作権法違反と窃盗は似ているのですが、感じる重さに違いがあるように思うのです。これはどこから来るのか。恐らく、「モノとしての実感があるかないか」。ここがミソでしょうか。

 自分が他人の物を盗めば、当然相手はそれを失うわけで、それによって困るですとか、悲しむですとか、金銭的な損失を蒙るだろうという想像が出来るわけです。そこで、大抵の人は心理的なブレーキが働くおかげで、窃盗行為を行う人は皆さんの身の回りにはほぼいないのではないかと考えます。犯罪心理学の類は勉強していないので、あくまで憶測ですが。

 ところが、著作権法違反を犯している方は多くいらっしゃいます。デジタル著作物は、いくらでも複製する事が出来て、他人の権利を侵害しているという意識が非常に希薄なのですね。ゲーム画像をアップして誰が困るの? 演奏した動画をアップして誰か被害を受けるの? そう感じるのはごもっともだと思います。目に余る場合は別として、個人の意識レベルでは、私もそう感じる事があるのは否定しません。ですが、突き詰めて考えれば、それをアップしなければ得られた「かもしれない」どこかの権利を侵害しているのは確かであって、もし訴えられたら負けは確定です。

 逆に、アップする事で宣伝に貢献してやっているという考えは捨てましょう。それは関係ないのですよ。宣伝してくれと依頼されているわけでもないですし、それによってどれだけの利益が発生したかは計算のしようがありません。それを計算して自慢したり金銭がほしいのであれば、アフィリエイトでもやりましょう。そういった側面もあるからこそ、黙認してくれている企業もあると考えておいた方が無難です。

 私が以前から続けている主張としては、著作権法自体がデジタル時代にまるでマッチしていない時代遅れの遺物のようなものであり、大胆な改正をせねばならんと。一個人が自由に情報を発信できるようになり、初めからデジタル著作物に接している現代の市民感覚とは乖離していると言わざるを得ません。つぎはぎで増築を続けた建物のようになっていて、古い条文を新しい媒体に合わせて無理やり解釈するから歪みが出ているのではないでしょうかと。

 私は明らかに著作権法に違反していると思われる動画などについては、例え面白くてもトゥウィートしないですとか、ゲーム画面を写真に撮ってアップしないですとか、自分なりに色々と小さな自粛をしておりまして、自分から積極的に違法行為をしようとは思いませんが、他人がアップしていたとして、著作権者が黙認しているようなものであれば、その人をとやかく言うつもりはないです。しかし、違法行為なのだと知っておく事は必要だと思っています。知った上でどうするかは、その人次第でしょう。

 それと、違法行為だからと法律を遵守して行動を慎んでいる人がいる一方、黙認されているからいいのだと好き勝手やっている人もいる状況ですと、同じコンテンツを扱う中に不公平が生じてしまうのではないかというのも気になるところです。同じ事をやりたいのにと我慢している人であろう現状を考えると、歯噛みする思いではないかと感じる事もままあります。

 だからといって、文句言われないんだったら俺も気にせず著作権侵害するぜヒャッハー! となると、モヒカンがバギーに乗って種籾を奪いに来る世紀末の荒れ果てた世界になってしまうわけで、あまり行状が悪いようですと、京都からケNシロウですとか、東新宿からSウザーといった、ファミコン神拳の伝承者らしき救世主がやってきてモヒカンの秘孔を突いて回り、パラダイスを築いていたモヒカンたちは一網打尽爆発四散という事態にもなりかねないわけで、お目こぼしで使わせてもらっている以上、ある程度自主的な線引きなんかがあっても良いのではないかと思うわけです。あべしと言ったときにはもう遅いのです。

 法律に違反しないのであれば自由な利用をしてよいと思いますが、法律に違反する行動を取る以上、それを自覚した上で節度を持った方が良いのではないですかねという事と、著作権法を今の世の中にあったものに改正しろよあくしろよという事と、そんなわけだから、直接関係ない外野があんまり小さな事にいちいち目くじら立てて気にしすぎても仕方ないんじゃないですかねという事です。決して法律違反を奨励しているわけではありませんので、誤解無きようお願い申し上げます。

 あと、著作権法違反がTPPで非親告罪化されたらどうなってしまうのだろうと気になっております。内容にもよりますが、タレこまれたらアウトという事になれば、動画文化などが一気に終焉を迎える可能性が無きにしもあらずだなあと。ニコニコ動画は壊滅の気配です。偉い人たちにおかれましては、後世に残るような文化的悲劇が起こらないよう、その辺よろしくお願いしたいと思います。動画文化が文化かどうかは知りませんが。

著作権の話は何かと面倒ですね” に1件のフィードバックがあります

  1. ピンバック: 同一性保持権は厳格に運用されているのでしょうか | 亮曰く

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