著作権団体が補償金制度の範囲拡大をしたがっている話


 著作権は何かと面倒で、出来る事なら気にしないで生きていきたいものですが、生活に密着してしまっているのでそうもいきません。

私的複製補償金で著作権団体が提言

 詳しい事は記事を見ていただくとして、つまる話、音楽や映像といった著作物をコピーできる「機能」からお金を徴収したいという事ですね。

 今まではCD-Rなど、著作物をデジタルコピーできる可能性のある「物」の価格に補償金を上乗せし、それを得ていたわけですが、CD-Rが売れなくなったんで、「物」に限定せずに徴収できるようにしたいように見えます。まだこれから議論が始まるという事なので何も分からないのですが、そもそも補償金自体がどうもにも腑に落ちない感じがあります。

「著作物をコピーするかもしれないから、その分の料金を先に取っておこう」という考え方で、著作物をコピーしない人からも漏れなく徴収しているわけです。逆に言えば徴収されているわけです。この制度の存在自体を知らない人の方が多いでしょうから、自分が知らないうちに支払わされているお金という風に感じる人も多いのではないでしょうか。ある時期からCD-Rに「データ用」と「音楽用」という区別が出来たのって覚えてませんか? ちょっと価格が高い「音楽用」のCD-Rでないと音楽CDがコピーできなかったりする。あれは「音楽用」の処理を施したCD-Rに補償金の価格が含まれているのです。音楽CDをコピーする人はその分のお金を負担してこっちを買ってね、と。

 じゃあもしコピーに使わなかった場合、先行して支払った補償金ってどうしてくれるの? という疑問も湧いてきますが、実は返還制度があります。ただし、「著作物をコピーしなかった事」を証明したうえで、返還請求手続きをする必要があります。

 ですが、そこまでして返還請求をする人なんているでしょうか。過去に請求を行なった例ではDVD-R4枚で8円が返還されたそうです。1枚あたり2円ですね。例えばDVD-Rを10枚買って、コピーに使わなかったからと証明して手続きして、20円が返ってくる。過去のケースでは80円切手を貼り、請求書を送ったそうで、個人ユーザーであればほとんどの場合、手続きには返ってくる金額以上の費用がかかりますから、どう考えてもマイナスになります。こんな面倒な事をする人は事実上いないわけです。ただし、返還できる制度をきちんと作っているから問題ない、というのが実に法律的で、確かにその通りであるとしか言いようがないのがなんとも。

 世間的に分かりやすいのは、源泉徴収、年末調整みたいな感覚でしょうか。先に徴収しとくけど、申請してくれたらもらいすぎた分返しますよ、という事ですかね。

 源泉徴収、年末調整は制度を知らなくても、世の中のほとんどの人がその対象になり処理が行なわれているわけです。しかし、代理で処理をしてくれる人がいるわけではない補償金について、可能性から金銭を徴収するというのはいかがなものなのかと思います。

 そんな問題をはらんだ補償金制度の範囲を機能レベルに拡大せよと言っているわけであって、これはとてもじゃないですが納得できるものではないですね。スマホ1台あたりいくらかでも徴収できれば莫大な金額になるでしょうから、是が非でも対象にしたいのでしょう。これを、著作権者の利益保護が第一義であると感じる人はどれだけいるのでしょうか。

 著作権を保護する事、権利者を保護する事は大切です。それは当然の事で理解ができます。ですが、著作権法自体がデジタル化の流れに全く対応できていない時代遅れの古代遺物になってしまっているわけで、変えるならまずはそこからでありましょうよと、もうかれこれ10年近く思っているのですが、時代にあった法整備は進んでいないと言わざるを得ないと思います。著作権団体には、ユーザーを規制する流れにばかり力を入れるのではなく、まずそこにメスを入れてほしいと切に願うものであります。

 私が著作権法の基本を学ばせていただいたある方がこんな事を言っていました。これは今でも私が著作権について考える際に、もっとも規範としている言葉です。

「著作権法は著作物を使わせないための法ではありません。使ってもらうための法なのです」

 ちなみに、基本だけ学んで、その先は全くです。

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